行政の恣意的裁量で事業者に罰則を科すことも可能になる
同様に、たまたま複数名の無症状陽性者が、同じ時間帯に時短要請に従っていない同じ店舗を利用し、数日後に発症したような事例があった場合、同店舗はクラスター発生店舗とみなされる可能性が高いわけです。しかし、この事例の場合、店舗側には何ら責めがないのに罰則が科せられてしまう可能性があります。
これは本項で最も重大な点です。都条例で規定する「ガイドライン」を遵守していれば、罰則の対象外についても考えなくてはいけません。
この事業者が行政罰を課される条件の一つとなる「遵守すべきガイドライン」の内容や遵守すべき事項が極めて不明確であり、その結果、行政の恣意的裁量で事業者に罰則を科すことも可能となってしまいます。少なくとも、ガイドラインを罰則適用の条件とするのであれば、知事の責任において、都民・事業者が遵守すべきガイドラインを定め、罰則の除外要件を明確にすべきです。
都知事は「何をどこまで遵守すればいいのか」を明確にするべきだ
ただ、罰則適用の条件となっている「ガイドライン」について、都の現行条例では、都のガイドラインだけではなく、国や区市町村、業界団体などさまざまな主体が策定するガイドラインが含まれており、「ガイドライン」の名がつけば何でも良いかのような規定になっています。
このため、店舗事業者は何を遵守すれば良いのか、どこまで感染症対策を講じれば良いのかがわからず混乱しているのが実情です。何をどこまで遵守すれば店舗の取組として十分な条件を満たしているのかは、【都知事がその権限を持って明確】にしなければ、事業者は自身が守るべき基準を見極められず混乱を招くだけなのです。都民ファーストがやるべきことは、まずはベクトルを小池知事に向けること。私が数カ月も前から主張している、知事の責任でのガイドライン制定を求めるべきです。
現実に東京都内では至るところで、虹色のステッカーが貼ってありますが、その中には感染拡大防止が図られていない店舗もあります。ガイドラインも曖昧で、かつ各店舗の自己申告制ですから、そうなるのも当然です。つまり、都の既存条例について不備があるのに、この修正をせず、パフォーマンスにはしっているのです。