デキるリーダーは“やりたいこと”に捉われない

マネジメントの大家、P.F.ドラッカーは、「成果をあげる人は、自らの時間とエネルギー、そして組織の時間とエネルギーを、一つのことに集中する」と述べています。

実際、苦戦する人ほど、アレもコレもやってしまい、行動すれど達成できず、といった状況になっていることは少なくありません。結果を出すビジネスパーソンは、アレもコレもしません。やりたくても我慢します。短時間で結果を出すことに注力するためです。

これは、戦略のセオリーです。33期連続で増収増益(2020年2月時点)を誇る、ニトリの似鳥昭雄会長は、「ホテル業の誘いをもらったが、やらなかった」といいます。また星野リゾートの星野佳路よしはる社長も、「ホテルの運営はするが、所有はしない。我々はホテル運営のプロなので」と“やらない”ことの大切さを説いています。

優れた経営者は、時間、資本、エネルギーには限りがあることを熟知しているから、“やらない”ことの大切さを知っているのです。経営者でなくても、現場のリーダーでもセオリーは一緒です。自身が率いるチームのメンバーに、アレもコレもやらせないのは、セオリー中のセオリーなのです。

やるべきことが見えてくればKPIは自然に減る

ある企業の営業リーダーから相談を受けたことがありました。

「今、うちの部署はやることが非常に多く、部下たちの体がちぎれそうです……」と。

伊庭正康『目標達成するリーダーが絶対やらないチームの動かし方』(日本実業出版社)

聞くと、7つの重要業績評価指標(KPI)が導入され、それをもとに動くことが求められているというのです。

「商品の案内件数」「その商品の導入率」「導入後の利用率」「実施後の満足度」などの指標が導入されており、それぞれの指標に「やるべき行動」がいくつも設定され、ひたすらそれに従って行動しているというのです。

経営レベルでは、このくらいの指標があっても何の問題もないのですが、日々の営業活動などの現場のマネジメントでは、このような数の指標はパワーを分散させてしまうだけです。

まず、実行組織においては、KPIは最大でも3つ。できれば1~2つに絞ります。「今、どこに注力すべきか」を考えて、やるべきことを絞るのです。

ちなみに、私のところに相談に来られたリーダーは、「今は自社の商品を広めるための初期フェーズ」と判断し、この期間のKPIを「商品の導入率」に絞って運用されました。

結果として、商品導入率アップのために「パンフレット」「説明ツール」「セールストークのやり方」などに対して、メンバーの工夫と行動を集中させることができたのです。

その結果、業績は一気に上昇基調になり、チームの一体感も高まったといいます。

もし仮に、会社から数多くのKPIを求められていたとしても、それのどれに注力するのかを決めるのもリーダーの仕事と割り切って、「今、やるべきこと」に絞る方法を考えてみてください。

水圧を一点集中させれば、鉄板でさえも穴をあけることができるように、厳しい目標であっても、皆で一点突破で乗り越えやすくなるでしょう。

■まとめ:メンバーのやるべきことを絞っているか?
■NG「アレもこれも」とやることを増やす

指標をいたずらに増やしてしまうと、チームが疲弊してしまい、結果として必ずやらなければならないことさえも、おろそかになってしまいます。
■OK「目標達成に影響しないこと」は見切ってやらない
会社からさまざまな行動基準を求められても、それらをすべて採用せず、やるべきことを絞るのもリーダーの役割です。
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