都心部、駅近、タワマンは下がらない

都心部・都市部、駅前・駅近、大規模タワーは引き続き売れ行きは好調を維持し、その他の大半はなだらかに下がっていく。その流れに変わりはない。

結局のところ住宅市場は、

(1)価値を維持する、あるいは価値が上がる不動産
(2)なだらかに下落し続ける不動産
(3)限りなく無価値になる、あるいはマイナス価値となる不動産

といった「三極化」の途上にある。コロナで一時混乱した後はそれが加速化しており、一段の低金利が住宅購入を後押ししている。これは従前と変わらない光景だ。むろん今後、第2波や第3波・新種が到来すれば話は別だ。

“オフィス離れ”も意外に起きていない

オフィスも、イメージほど急激に空室率が上昇する状況ではない。かれこれ10年前の、東京オフィスの空室率は10%近く、これが1%台となり供給が非常に逼迫ひっぱくしていたところ、コロナで3%台となった。なかでも渋谷の空室率が上昇したのは、IT系かつ中小規模で機動的に動けるテナントが多いためで、丸の内・大手町や虎ノ門、新宿の大規模ビル群などは動きがない。

そもそも渋谷は空室がほとんどみられず、ビットバレーと呼ばれるなかIT系企業が集まりたくても集まれず、仕方なく恵比寿や五反田に流れた経緯がある。渋谷に空室が発生すれば、その復活は早いはずだ。一部企業が地方移転といった極端な例はあるものの、大半の企業が在宅勤務の労働生産性を検証中なのと、何より3~5年といった長期の賃貸契約を結んでおり、期間中に解約すれば違約金が発生する。

したがってこのまま在宅勤務が普及しても、その影響は3~5年をかけてじわじわと出てくるのが妥当だろう。一方で都心部でも少し裏通りに入った小ぶりのビルは厳しいのかもしれない。つまりより立地の悪い物件、建物の性能に課題がある物件など、弱いものがとことん弱くなる構図だ。

割安感のある日本の不動産市場が海外で注目

日米欧の同時金融緩和、とりわけ日米は無制限金融緩和を標榜しており、マネーがあふれている。こうしたなか、グローバルに見て相対的に割安感があり、同時にコロナの影響が少なかった日本の不動産に注目が集まっていることは、筆者が先般出演したクローズアップ現代プラス(NHK)でも説明した。

かつて日本はプラザ合意で円高に誘導され、低金利政策と金融緩和、財政出動を行いバブル経済につながったが、今回も株や不動産に過剰に資金が流れ込むことで価格が上がり、株を売って不動産を購入するといったバブルがバブルを生む可能性もある。90年型バブルにおいてもリーマン・ショック前のプチバブルでも「賃料上昇は後から付いてくる」といった謎の理屈で、マイナス利回りの不動産取引が行われていた。