さらに災難は続いて、その空室に人が入って一安心と思っていたら、例のクレーマーが生活苦からか、その部屋に空き巣に入って逮捕。これにも驚きですが、当然ながら入居者は去ってしまいました。もう、不幸のオンパレード状態で(笑)。逮捕を機にクレーマーは退去したのですが、その後に部屋に入ると残存物の山。撤去費用とリフォーム代に20万円、裁判の弁護士費用に200万円、家賃滞納と空室による被害もあり、もう散々の出来事でした。これをきっかけに、大家は入居者と積極的に関わることが大事と思うようになり、直接電話をして情報収集したり、防犯グッズを取り付けたり、人にも物件にも気を使うようにしています。

編集部 入居者とのトラブルは大家さんにつきものとはいえ、それは滅多にない経験ではないでしょうか。一方、川村さんは、景気後退の影響で困り果てているそうですね。

 親から賃貸業を引き継いだ時点で入居率が悪く、月々の返済にも困る状況だったのです。当時の総借入額は約20億円でしたから。それで、一部の物件を売却したり、借入先をかえることで、キャッシュフローを大幅に改善。返済額をほぼ半減させることができホッとしていたのですが、次に降りかかってきたのが空室対策です。私が持つ物件は東京都下に集中していて、ただでさえ空室率が高くて優良物件とはいいがたいのに、これに拍車をかけたのが、法人貸しの解約です。

編集部 どうしてですか?

 近隣に製造業の会社が多いことから人材派遣業数社に貸していたのですが、昨今の景気悪化による派遣切りの影響で撤退が相次ぎ、それに伴い賃貸契約も解除。ある会社に至っては、貸し出しがゼロになりました。法人需要は、入居者が大口で入る分メリットも大きいのですが、出ていかれるときの打撃も計り知れない。その後は、不動産管理のセミナーに参加して大家としてのノウハウを学び、もっと積極的に物件に携わる必要があると知りました。現在は、近隣に大学が多いことから個人向けにシフトし、若者向けに内装を工夫する、家具・家電付きの物件を増やすなど、これ以上の空室率悪化に歯止めがかかるよう努力する毎日です。ただ少子化の影響が出始めているのか、こちらも厳しいですね。

(松田健一=撮影)