裏口入学はあったのか聞かれると…

日芸を選んだ理由を、「幼い頃から映画と演劇が好きで、やるものすべてがばかうけ。いってみれば天才ですね」。自身の学力については、「国語が唯一の得意科目。英語はa little」

だが、「(父親から)大学は人との出会いがあるといわれて行ったのに、田中(裕二)くらいしか会わなかった」とボケをかました。

裏口入学の自覚はという質問には、キッパリと「ない」。新潮は、大学の教員からホテルで入試の個人指導を受けたと報じているが、「まったくない」。ホテルはと聞かれると、「ラブホテルですか?」と、これまたおとぼけ。

父親のことは「憧れの存在だった」。だが、裏口入学はあったのかという肝心かなめの質問には歯切れが悪かった。

父親が亡くなっているので真実を明らかにするのは難しいとして、「何ともいえない。可能性は否定できない」と、肯定とも思える発言だった。

新潮側の弁護士から、謝罪広告の必要性を問われ、「日芸は田中と出会った場所。それをインチキといわれ、暴力団と父親が関わっていると書かれて、多少の怒りはある」と、これも控えめないい方だったようだ。

太田の高校時代の恩師2人が太田側の証人として出廷し、「入試に受かる力が十分にあった」と証言してくれたのが、唯一の“救い”だったのではないか。

休憩を挟んで約4時間のロングラン口頭弁論は幕を閉じ、判決は12月21日になる。

絶対勝つという意志はなかったように見える

私も現役時代は何十回も名誉棄損で訴えられた。名誉棄損裁判は訴えられたメディア側に不利な条件になっている。なぜなら、事実であることを立証できても、名誉棄損は成立するからである。

昔、あくどいやり方でカネを貸し、大もうけしていた人間のことを報じる際、某週刊誌が「マムシの○○○」とタイトルを付けた。

相手は、「マムシ」という形容は名誉棄損に当たると訴え、週刊誌側が敗訴した。あくどいやり方で多くの人間を泣かしていることが事実だとしても、マムシという表現は名誉棄損に当たるというのである。

私の経験則でこの法廷のやりとりを読むと、太田側は最初から、この裁判で絶対勝とうという強い意志はなかったように思う。

私が弁護士なら、裏口入学があったのかという質問に、「何ともいえない。可能性は否定できない」などといわせない。