ユーザーを獲得できる
実はこの改修時に、いまや「少年ジャンプ+」の看板作品になった「SPY×FAMILY」の連載が始まりました。それもあって、相乗効果でユーザー数が1割近く増えました。作品の力とマーケティングの力、両方がうまくかみ合ったときに、もっともユーザーを獲得できるのかもしれません。
19年の1月からは、海外向けに「MANGA Plus」というアプリも始めました。対象は日中韓を除く全世界で、英語とスペイン語、タイ語でジャンプの人気作品を無料で読めます。
アプリ開発の背景にあったのは海賊版の存在です。海外にも読者がいることはわかっていました。ただ、その多くは正規版が読めないので海賊版で読んでいる。ならば正規版を作って読者に届けるのが、私たちの仕事だろうと考えました。
もう1つ、韓国発祥のデジタルコミック「WEBTOON」の勢いも意識しました。WEBTOONはスマホに合わせたタテ長形式で描かれた漫画で、世界で急速に普及しています。我々としては、それに負けていられないという思いがありました。
実際にリリースして気づいたのは、いまや漫画を含めたオタク文化が世界で同時多発的に楽しむものになっていること。19年の秋、シンガポールで開催されたアニメイベントに行きました。そこには「鬼滅の刃」の主人公・竈門炭治郎の半纏を着たコスプレイヤーがたくさんいた。以前は日本で人気になったものが少し遅れて世界でも流行っていたのですが、いまは新しいものが出てきたら世界みんなで同時に楽しむことが当たり前になっている。その様子を見て、「MANGA Plus」をやってよかったなと思いました。
ほかにも「少年ジャンプ+」では、4年前からアプリ開発コンテストを始めました。昔、友達と漫画を回し読みしていたように地図上で漫画を交換できる「マワシヨミジャンプ」も、このコンテストから生まれました。20年はさらに進化させて、「マンガテック2020」と銘打ったプログラムを行う予定です。そこから、まだ世界にない新しいビジネスモデルを生み出せたら面白いと考えています。
そういった新しい挑戦も含めて、「少年ジャンプ+」はもっと成長できると考えています。目指すは、週のアクティブユーザー1000万人。「週刊少年ジャンプ」は600万部発行していたこともありました。友達や兄弟で回し読みするから、読者は1000万人いたはず。デジタルで、「週刊少年ジャンプ」を超えるのが目標です。