コロナ前より強い観光力を発揮できる
マイクロツーリズムに力を入れることは、18カ月後にも活きてきます。日本のインバウンド対応の弱点は、観光産業の人たちだけが地域の魅力を発信していること。じつは地域の方々は案外、魅力に気づいていません。しかし、世界中から集まる観光客は、観光産業の人だけと会うわけではない。地元のみなさんが「自分たちの町の魅力はここ」と意識しないと、本当の意味で強い観光地にならないのです。その意味で、マイクロツーリズムは魅力を知ってもらういいきっかけになるでしょう。
一方、リゾート側も、地域らしさを反映できていないところがたくさんあります。たとえば同じ地域に木工家がいるのにイタリアの家具を置いてみたり、地域のおいしい食材があるのにそれに気づいていなかったり。マイクロツーリズムを通して、これまで地域の産業をつくってきた方々とネットワークができれば、私たちも地域らしさをさらに発信できるはずです。
地域の方々、リゾート側の双方がマイクロツーリズムを通して地域の良さを知れば、コロナが終息してインバウンドが戻り始めたとき、コロナ前より強い観光力を発揮できるでしょう。マイクロツーリズムは、需要を下支えすることだけが目的ではなく、アフターコロナへの布石でもあるのです。
リサ・パートナーズとの「ホテル旅館ファンド」組成も、先を見据えてのことです。20年4~5月、売却を検討しているホテルや旅館からいくつかご相談を受けましたが、私たちは不動産の投資や所有はしないため、解決策がなかなか見つかりませんでした。そんなときにパートナーとなり、運営会社として関わることになりました。ファンドの具体的な案件については今後決まっていく予定ですが、運営拠点が増えることは私たちにとってもプラスです。
過去の経験から言うと、コロナでなんとか生き残れたとしても、バランスシートは相当に傷んでいるでしょう。アフターコロナは、借金を返していくために、コロナ前以上に収益率を高めなくてはいけません。運営拠点が増えればスケールメリットを活かして生産性を高めることができますから、運営拠点はやはり多いほうがいい。
振り返ると、バブル崩壊後に星野リゾートは運営の力を発揮して成長しました。また、リーマンショックは投資家が減ってリートをつくるきっかけになりました。コロナもただ耐えしのぐのではなく、さらなる成長につながるように工夫をしていきたいです。