欧州の上場企業では「世襲」はめったにない

トヨタ自動車の場合、創業家の豊田章男氏が社長を務めるが、保有株は475万2000株。発行済株式のわずか0.14%に過ぎない。株主としての力は決して大きくないのだ。それでも創業家出身者として「大政奉還」され、社長に迎え入れられたことで、圧倒的な権限を握っているわけだ。

欧州の場合は、創業家が大株主として社長選びに大きな力を握るケースもあるが、その場合も実際に経営を担うのは「プロ経営者」である。創業一族の中に優秀な適任者がいる場合、経営を任せるケースもあるが、「前社長の息子だから自動的に」という日本企業に往々にしてある「世襲」というのは上場企業の場合は稀だ。多くの創業家で子供に跡を継がせようとしてなかなかうまく行かないのはこのためだ。

日本の場合、相続税が高いことから、創業家が株式を保有し続けることが難しくなり、高い持株比率を維持できなくなる、という問題もある。コーポレートガバナンス改革で株主権が強まったとも言われるが、実際には「社長ポスト」を握ることが権力掌握に必須となっている。大戸屋のケースでも大株主よりも、社長の方が強かった、ということが証明されている。

「過半数を握れば思い通り」とはいかない

ではなぜ、コロワイドはTOBで51%の株式取得を狙っているのか。それはズバリ、社長ポストを握るためだ。過半数を握れば何でも思う通りになる、と思っているのかもしれない。

だが、最近は状況が変わっている。コロワイドが51%を握ったとしても、49%の「少数株主」の声を無視することができなくなっているのだ。社外取締役などによる委員会を立ち上げ、少数株主にとっても利益のある人事などを行うことが求められる。つまり、大戸屋の株主の圧倒的多数を占める個人株主たちにも納得してもらえる人事や経営戦略を示す必要が出てくるのだ。

敵対的TOBでコロワイドが過半数の株式を握れば、それで経営権を巡る騒動が完全に終わるというわけではない。

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