「犯罪の前科者」がシッター業をできない仕組み
フランスでは保育される「子どもの安全」を確保するため、「誰でも」がシッターに就業できない仕組みを、資格・認可以外で設けているのだ。そこで「子どもの安全を脅かす」とキックアウトされるのは、特定の犯罪の前科者たち。そのために活用されているのが、個人の犯罪歴が全て記された司法書類「前科調書」(フランス語でCasier Judiciaire)である。
以下、システムを紹介していこう。
「前科調書」はフランス司法省(日本の法務省に相当)が管轄し、フランス国籍者だけではなく、他国生まれの外国人にも対応している。調書は必要に応じてその都度作成され、すべての前科のほか、特定の職業への従事を禁じる「法的欠格事由」も記載する。
個人情報保護、犯罪者更生支援など人権面への配慮から、調書全体を閲覧できるのは司法関係者のみ。それを一部抜粋する形で、特定の職種の雇用時に参照できる「第二証明書」と、本人と法定代理人のみが取り寄せできる「第三証明書」の2種類の抄本がある。シッター雇用の際に、前科者を除外するフィルターの役目を果たすのが、この2種類の抄本だ。
「証明書の提出」をシッターに依頼
第二証明書を申請・閲覧できるのは、役所・軍隊・子ども関係・警備関係の企業・団体。この抄本からは道路交通法違反や親権に関する違反、商法に関する違反など、雇用内容に関係の薄い罪状は除外される。
第三証明書は第二証明書より記載事項がさらに少なく、拘禁刑2年以上の重罪と、未成年関連職・ボランティアの法的欠格事由(後述する)のみが記されている。軽犯罪者の更生を阻害しない範囲の記載だ。これは雇用側からは取得できず、閲覧したい際は、求職者に提出を依頼する必要がある。個人でベビーシッターを契約する際には、この第三証明書の提出を依頼し、「前科なし」を確認するのが一般的だ。
取得手続きはオンラインで簡素化されており、司法省直轄の元、取り寄せは無料となっている。