このままでは山本太郎には「伸びしろ」がない
永田町を取材する政治記者たちを「おや?」と思わせたのは2位争いだった。制したのは立憲民主、共産、社民の野党3党が支援した元日本弁護士連合会会長の宇都宮健児氏で、その得票数は84万4151票。わずか1年前の参議院選挙で約230万票が集めた「れいわ新選組」。その代表の山本氏は3位の65万7277票にとどまった。
たしかに宇都宮氏は過去2回、都知事選に立候補し、それぞれ90万票以上を獲得してきた「猛者」だ。出馬表明が告示日3日前になった山本氏の出遅れ感もある。だが、全国行脚もして知名度のある山本氏は、コロナ禍で展開された都知事選の街頭演説で他候補も羨むほどの多くの支援者を集めていたはず。それだけに、逆に「伸びしろ」のなさに注目が集まってしまうことになった。
山本氏の原点は、2013年の参議院選挙東京選挙区(改選数5)に無所属で出馬し、66万6684票を獲得したことにある。自民党の武見敬三元厚労副大臣を上回り、4位で初当選した。その後、現在は国民民主党の小沢一郎衆議院議員とともに「結党」もしたが、2019年4月には「独立」し、れいわ新選組を設立した。初陣となった同年夏の参議院選挙で、山本氏は全候補者で最多となる100万票近い比例個人票を獲得。だが、れいわ新選組として得られた比例2議席は難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の舩後靖彦氏と、重度の障害を抱える木村英子氏に譲り、代表の山本氏は「元参議院議員」という立場を選択した。その発想と戦略は従来の政界にはないもので、「この『れいわ旋風』が次も起きれば大きな影響がある」(自民党ベテラン議員)との警戒を誘ってきた。
女性支持が低すぎる山本太郎
ただ、山本氏が2013年参議院選挙と今回の都知事選で獲得した票は「66万~67万票」で、その流れに大きな変化は見られない。れいわ新選組は2019年の参議院選挙の際、若い世代から人気があった一方で、高齢者の支持は低かった。今回の都知事選で朝日新聞が実施した出口調査を見ても、山本氏の支持は10代~60代で13~16%だったものの、70歳以上は8%にとどまる。リベラル層が重なるとされる宇都宮氏は高齢層が比較的高く、若年層の支持が低いのとは対照的だ。
舌鋒鋭く小池氏を批判し、来年夏に延期された東京五輪・パラリンピックの中止や総額15兆円のコロナ対策といった公約とともに聴衆を鼓舞する演説はキラリと光り、会場は熱気に包まれる。だが、その早口でせわしなく手を動かせる演説手法には「なんか脂ギッシュな感じでついていけない」(都内在住の40代女性)、「ルックスやがっちりとした体形は良いけど、なんとなく怖い」(都内在住の50代女性)との声も漏れる。都知事選でNHKが実施した出口調査によると、小池氏は男性の約5割、女性の60%台後半から支持を集めたが、山本氏は男性からの人気は宇都宮氏とほぼ互角だったものの、女性の支持は主要候補者の中で低かった。