にんにく不使用餃子で新規客層を狙う
「餃子ブーム」が追い風になっていることも大きいだろう。ここ数年、餃子を売りとする店が増えている。関東圏を中心に店舗展開している餃子居酒屋チェーン「肉汁餃子製作所ダンダダン酒場」が代表的だ。ブームの中で、王将は売りの餃子を前面に打ち出して需要の取り込みを図っている。食材にこだわり、豚肉とキャベツ、ニラ、ニンニク、生姜、小麦粉は全て国産だ。なかでもニンニクと小麦粉は産地にもこだわっている。この餃子が業績を下支えしているのだ。
さらに、16年からニンニクが入っていない「にんにくゼロ餃子」を発売。ニンニクの臭いを気にする人が気軽に食べられるように開発した。19年7月にはこれを進化させて、「にんにくゼロ生姜餃子」を発売している。国産生姜を通常の餃子の2倍使用し、生姜の香りと味を引き出すために皮の厚さや具材のバランスを変更した。
ニンニクが入っていない餃子には、これまでリーチできていなかった客層の開拓が期待できる。例えば女性層だ。現状の王将は男性客が約7割となっているが、ニンニクが入っていない餃子であれば臭いを気にする女性でも気軽に食べられる。あるいは性別にかかわらず、販売職や営業職など、口臭を気にしなければならない職業の人を取り込むことも可能だろう。
消費税増税後は「生餃子」持ち帰り販売に注力
持ち帰り用の「生餃子」の販売にも力を入れてきた。著名人を起用して持ち帰りの生餃子を訴求するテレビCMを放送したほか、前述の通り、生餃子のセールも積極的に実施している。昨年10月の消費増税後も、持ち帰りならば軽減税率が適用されることを念頭に、10〜12月は毎月セールを行った。これらは「王将は持ち帰り商品も充実している」というイメージの強化につながっており、新型コロナ下で威力を発揮したというわけだ。
もともと持ち帰りが多いハンバーガーチェーンは、外食チェーンの中でも業績を維持している。王将も、数年かけて行ってきたさまざまな施策が、新型コロナ下で売り上げの下支えとなった。
とはいえ、減収であることに変わりはない。あくまで、ほかの多くの外食店よりはマシという程度にすぎない。市場の変化に合わせて、さらなる施策を講じていく必要があるだろう。