それによると、わが国製造業のうち、3Dデータのみで設計を行っているのはわずか17.0%である(図1)。さらに、協力企業への設計指示の半数以上がいまだに図面で行われ、3Dデータによる指示は15.7%にすぎないことも明らかとなったのである(図2)。
しかし、部門を超えた協業によるエンジニアリングは、元はと言えば、わが国の製造業のお家芸であった。そうであるなら、エンジニアリングのデジタル化は、わが国の製造業が本来もっていたダイナミック・ケイパビリティを復活させ、さらには増幅させるはずである。
日本のものづくり「コロナ危機すらも克服できる」
まとめよう。
不確実性の高い世界においては、企業の競争優位を決めるのはダイナミック・ケイパビリティである。エンジニアリングのデジタル化などによって、ダイナミック・ケイパビリティを高めた企業こそが、ニュー・ノーマルの勝者となるであろう。そのダイナミック・ケイパビリティのポテンシャルを、わが国の製造業は秘めている。
このダイナミック・ケイパビリティとは、敗戦、石油危機、円高不況、バブル崩壊、リーマン・ショック、東日本大震災等、数々の不確実性を乗り越える中で鍛え上げてきた底力である。その底力をデジタル技術によって解き放てば、この戦後最悪と言われるコロナ危機すらも克服できるはずだ。