若い世代の経済環境の改善には生産性向上が不可欠
新型コロナの感染拡大で、企業が内部留保を厚くしたことの正当性を指摘する向きもあるが、これはあまりに短期的視点だ。逆に、企業が人材への投資やIT投資などを長きにわたり怠ってきたことが、ここまで続いてきた低成長の主要因であるとともに、それによる生産性の低い産業の温存が、足もとで生じている激しい雇用調整圧力の主因である。
今般、新型コロナによる感染者数や死者数が、欧米に比べ格段に少ないわが国において、経済の落ち込みからの回復に欧米よりも時間を要すると予測するエコノミストもあるが、この背景には、労働集約的で成長力に乏しいわが国の産業構造の影響がある。
新型コロナの感染拡大にかかわらず、わが国が進めなければならないのは、生産性向上に向けた取り組みに他ならない。とりわけ、少子化、子どもの減少という避けられない現実を正面から受け止めて、雇用の規模ではなく、雇用の質にこだわった産業戦略を構築することが必要となる。
新型コロナショックからの景気回復の過程で、再び人手不足が深刻化する可能性が高い。わが国産業界は、これまで避けて通ってきた労働生産性を高めていくこと、すなわち労働集約的な仕事を資本集約的、さらには知識集約的な仕事に積極的に切り替えることに、正面から向き合わなければならないのである。生産性向上に向けた取り組みの具体的な話については、次回に論じる。