いま首相会見で質問するには、会見を主催している「記者クラブ」への登録が必要だ。大手メディアに所属していない場合、そのハードルは極めて高い。フリー記者として首相会見に出続けている畠山理仁氏は「現在フリーランスの登録者は11人(カメラ1人、ペン記者10人)で、いずれも民主党政権時に登録した記者たちだ。会見の主催者が本当に記者クラブなのであれば、こうした理不尽な仕組みはあらためるべきだ」と訴える――。
写真撮影=小川裕夫
安倍首相の記者会見で挙手をする記者。司会進行をする内閣広報官から指名されれば質問できる。

「筋書き」ありきの首相会見

新型コロナウイルスの感染拡大以降、安倍晋三首相の記者会見に注目が集まっている。悪くない。わが国の首相が何を考え、何を話すかを国民が注視することは大切だ。私自身もそう考え、できる限り首相の発言を現場で聞こうと首相官邸に足を運んできた。

しかし、私が現場で見てきた風景と、メディアを通じて会見を見た人が抱く感想との間には大きな隔たりがある。その原因は、多くの人が「首相会見の実態」を知らないからだと私は考えている。

もちろん知っている人もいる。しかし、知らない人もいるはずだ。だから最初に書いておく。首相官邸で行われる記者会見には一定の「筋書き」がある。大部分が「予定調和の儀式」になっていると言ってもいい。

信じられない人もいるかもしれないが本当だ。これは安倍首相自身も国会の場で認めた事実である。3月2日の参議院予算委員会で、立憲民主党の蓮舫参議院議員が「首相会見に関する質疑」を行った。安倍首相はこの時、「あらかじめ記者クラブと広報室側である程度の打合せをしている」ことを認めたのだ(※1)

※1:「国会会議録検索システム」(第201回国会参議院予算委員会第4号令和2年3月2日)

首相会見が一種の「儀式」であることは、これまで公然の秘密だった。しかし、この時の質疑では、安倍首相の口から首相会見を語る上で無視できない重要発言が飛び出した。

「いつもこの総理会見においてはある程度のこのやり取り、やり取りについてあらかじめ質問をいただいているところでございますが、その中で、誰にこのお答えをさせていただくかということについては司会を務める広報官の方で責任を持って対応しているところであります」