愛社精神を支えている要素は決して一つではない。いくつかの要素が多様に紡がれて構成されている。もちろん目に見えるものとして福利厚生も重要だろう。確かに同社は社員が自由に物件を選択できる社宅制度のほか、旅行や教育などの福利厚生メニューを自由に選べるカフェテリアプランの付与金額は年間12万ポイント(1ポイント=1円)と他社に比べても遜色のない高さを誇る。ただし、それだけではないだろう。
その一つが数十年続いている先輩と後輩の“熱い紐帯”を醸成する「ブラザー(シスター)制度」だ。同社の新入社員は4月の導入研修後に現場に仮配属され、9月の正式配属までにOJTを受ける。
その間に新入社員1人に先般社員1人が「ブラザー」として張り付き、公私にわたり面倒を見る。ブラザーになる社員は公募で選ばれ、仮配属までの期間にリスニングなど新入社員対応プログラムを学習して臨む。もちろん、ブラザーも自分の仕事を抱えながら面倒を見ることになるが、応募者は多いという。
「ブラザー自身も先輩に教えられ、勇気づけられた経験を持っており、やりがいを感じて応募します。期間中はブラザーが責任を持って研修の手配も行い、自分の教え子なのでしっかり教えてくれとブラザーが窓口となって他の部門に依頼します。新入社員がいつもどんな状況にあるか日誌なども全部見て常にチェックし、何でも聞ける兄貴的存在になります」(丸山人事部長)
ブラザーは入社3年目から40歳ぐらいと幅広い。担当するのは4カ月ほどであるが、そこで培われたつながりは一生のつきあいに発展するという。
「社員は先輩の真似をして育ちます。私自身、先輩にさんざん世話になったし、つきあいは今でも続いています。会社が好きなのは、人間集団が好きということでもあります。いつも先輩、同僚、後輩の顔が浮かんできますし、彼らに大変世話になりながら経験を積みました。その原点がブラザー制度なのです」(丸山人事部長)