勉強習慣がなかった生徒たちが1日12時間勉強!

A君同様に、東大受験を公言しているもう一人が、芸術コース2年生のBさん。芸大志望からの進路変更のきっかけは、合宿前の6月、RDPによる東大見学ツアーに参加したことだという。

昨夏の勉強合宿の合間、ホテル裏の敷地内を散歩する2年生4人。(撮影=黒坂明美)

「合格率E判定から、東大文三に現役合格された方(女子)が、私が興味のある心理学専攻でした。とても楽しそうに大学生活について話される表情が輝いていて、私もあんな大学生になりたいと憧れました」

そう話すBさんもキラキラしていた。東大生と会い、じかに話を聞き、相談にも乗ってもらえる。受験勉強の動機づけとしては最高だろう。

A君と同じ進学コース2年生で、4年制看護大学への進学を目指すCさん。彼女は「放課後の自由学習は、先生が付き添ってくださり、常に質問できます。生徒同士で宿題の答えを見せ合い、意見交換をすることで、仲間の大切さも実感しています」と話す。

合宿先を訪ねてくれた母親は、Cさんの変化をこう話した。

「今までテレビやYouTubeを見て過ごしていた時間が、スタサプを見る時間に変わりましたね。わからない問題があると、スタサプで関連動画を探しては見ているようです」

1年生の頃は、学校で配られたプリント問題を自宅で解く程度。ところが、スタサプで勉強習慣が身につき始めてからは、「看護系の参考書や問題集を買いに、私も書店に連れて行かれます」と、母親は目を細めた。

2ケタの足し算引き算に時間がかかる子もペンを握る手を止めない

夏合宿に話を戻す。開始から3時間後に昼食になったが、15人全員がそれまで黙々と各種ドリルに取り組んでいた。2ケタの足し算引き算に時間がかかる子や、漢字の熟語づくりが苦手な子もいた。だが誰一人、ペンを握る手を止めなかった。

午後は西岡の講義もふくめて5時間。夕食後も、全員が午後8時から午前0時直前まで自由学習を続けたという。勉強習慣がなかった生徒たちが1日12時間勉強! 1人では難しくても仲間が一緒なら頑張れる。

2020年1月、誠恵高校の2時限目の特別授業を見学した。RDPの英検3級不合格を機に積極的になれた2年生男子3人が受ける古文の授業。当日配られた、センター試験の模擬問題は、平安時代の歌物語『伊勢物語』の「筒井筒つついづつ」の一節だ。

「男性俳優の浮気話が報道されていますが、これも幼なじみと結婚している男性が、浮気をする話です」

古文を担当する高橋通明みちあき教頭(51)がそう切り出すと、A君がすかさず「不倫は日本の文化です」と、某男性俳優の昔の迷言を引用した。高橋が、「古っ! お前、実はオッサンだね」と応じる。そこからセンター試験の出題傾向を織り交ぜ、設問読解の要点を説明していく。

この授業のおかげで、A君は苦手だった古文読解のコツをつかみ、助動詞の見分け方テストで、最近76点の自己最高点を取ったと、力強い笑顔とともに胸を張った。