センター試験なら本人の努力で格差を埋められる
それにもかかわらず、国は格差をさらに助長するような教育改革を進めようとしています。
文部科学省は2020年度から大学入試センター試験を取りやめ、「大学入学共通テスト」を導入する予定でした。制度の不備が指摘され、結局は取りやめになったものの、共通テストでは国語と数学に記述式問題を導入し、英語は民間試験の成績を入試に利用する新たな仕組みを設けるというのです。
記述式を導入すれば当然、採点に時間がかかります。50万人以上が志願する共通テストで、公平にブレなく採点できるのか。ただし、フランスの大学入学に必要な「バカロレア」は70万人くらいの受験者に記述式問題を課していますので、採点方式などをもっと学ぶ必要があると思います。
また、英語に関しては民間試験を入試に利用する場合、「大学に提出する成績は2回」と決められています。受験回数には制限がないので何度でも挑戦できる受験生が有利です。
受験料は試験によって異なりますが、TOEFLだと1回受験するのにおよそ2万5000円。会場は各地の主要都市に限られます。交通費や受験費用を考えると、まさに住んでいる地域や親の経済力がダイレクトに教育格差につながってしまいます。
その意味で僕は今の大学のセンター試験はある程度公平な仕組みだと思っています。マークシート式であればブレなく採点できるし、民間試験を複数回受けられるかどうかなどの格差も生まれにくい。本人の努力次第で地域格差や親の所得格差を埋めることができます。
経験値が低いとAO入試を通過するのは難しい
逆に国公立、私立大学問わず導入が増えているAO入試はある意味格差を拡大する方向にベクトルが傾きます。
一般的にAO入試は、一発勝負の学力試験を課さない代わりに、高校の調査書や、学業以外の活動実績、志望理由書などの書類審査と、面接での審査で総合力を見ていきます。
そうなると、教育機会の格差がものを言う。親に経済力があって、小さい頃から沢山の本や文化・芸術に触れたり、習い事をしたり、海外研修や留学に行く機会があったりした子供の方が、多様な経験があり、AO入試には圧倒的に有利といえます。
また、試験会場で受験生が大人の面接官を相手に、緊張せず自分の考えをはっきりと簡潔に述べる能力を身につけるには場慣れが必要ですが、そういった能力も多様な経験を通じてこそ身についていくものでしょう。つまり、試験で総合力を要求すればするほど、格差は拡大していくといえます。
ただし、AO入試がすべて悪いわけではありません。大学側は、こういった教育格差が入試に影響するということを踏まえて、受験生にとってアンフェアな部分をできるだけ少なくする努力をすべきでしょう。
個人的な意見ですが、センター試験を高校卒業認定試験(旧大学入学資格検定試験=大検)と一本化すればいいと思います。そうすれば、不登校になり高校へ行けなかった子供も、自分で勉強してセンター試験にパスすれば大学へ進むことができる。