WHOはなぜ、台湾の警告を無視したのか?

米国・欧州がコロナウイルスの対応に苦慮する中、台湾はウイルスの封じ込めに成功しているといえる数少ない国です。今月14日には新規感染者数ゼロを達成しており、IQ180の大臣・オードリー氏の妙案で政府がマスクを買い取り、一部の人による買い占め防止に打って出るなどその手腕は見事なものです。

そんな台湾は昨年12月末に、中国・武漢で原因不明の肺炎が蔓延しており「人から人の感染の可能性」についてWHOにメールで通報しています。しかし、WHOはこれを無視。それどころか今年1月に「人から人への感染は少なく、緊急事態にはあたらない」などと台湾の主張を否定しました。

中国は台湾のWHO参加は「一つの中国」原則を認めない方針であり、中国への忖度をするWHOが台湾の主張を無視した格好です。

結果的に各国で感染拡大防止策が遅れることとなり、パンデミックが起きたことでトランプ大統領はWHOへの資金拠出停止につながったのです。

なぜ中国がWHOを今牛耳っている、と言われるのか

よく「WHOはチャイナ・マネーで買収された」という主張が見られます。ただ、WHOへの拠出額をみるとそうでもありません。2018年の実績で言えば、米国が3.4億ドルで中国は4400万ドルですから、圧倒的に拠出しているのは中国ではなく米国です。

一方で、WHO事務局長は国連加盟国によって、平等に1国1票の投票で選ばれます。投票数を稼ぐには、国の数が多い新興国から支持を得る必要があります。そして中国は途上国への輸出総額は世界1位、輸入総額で言えば2位の立場にあります。

「ニューズウィーク」に寄稿した中国問題グローバル研究所の遠藤誉所長は、テドロス・アダノム・ゲブレイェスス事務局長の選出について以下のように解説しています。

「(テドロス事務局長の出身地)エチオピアは「一帯一路」の要衝の一つで、たとえば鉄道建設などにおいて中国が最大の投資国(85%)となっている。チャイナ・マネーなしではエチオピアの国家運営は成り立たない。そのことを熟知している中国は、それまでの香港のマーガレット・チャンWHO事務局長の後任選挙でテドロスの後押しに走り回ったが、2017年5月23日のWHO総会における選挙で見事に成功している。中国の狙い通りテドロスが当選し、2017年7月1日に事務局長に就任したわけだ」(引用元:習近平とWHO事務局長の「仲」が人類に危機をもたらす

投票も健康支援も新興国と密接に関わっている特殊性と、新興国と関係の深い中国の関係性から「WHOは中国に牛耳られている」と指摘されているのです。