価値観ほぐしのコツ②過去を否定せず、プラスしていく
急ハンドルと同様にやってしまいがちなのが「これまでの自分のやり方は間違っていた」と、自分の過去を否定してしまうことです。心の仕組みについて学ぶと、即座に過去の自分を否定しようとする人がたくさんいます。「これまでは自分はこんなに苦しかった。その理由がわかった。違う人生を歩もう」、こんなふうに、全部手放してからっぽにすれば、新しいものが入れ替わるように入ってくる、と思ってしまう。苦しんでエネルギーがなくなっている人ほど、そうやって楽になりたいと願います。
しかし、50代まであなたを支えてきた価値観をまるっきり変えるのは不可能です。本当はこれがやりたかった、残り人生50年、あきらめないでやろう、と思ったとする。しかし、もうこれまでの経験、人とのつながり、家族、住まいがある中で、すべてを手放して挑戦しても、満足したり成功したりする確率は低いでしょう。それはあなたが張ってきた根を断ち切る行為であり、知らないうちに得ていた栄養も失うことになるかもしれません。
変えられない価値観には「うまく付き合う」
あなたの価値観は、あなたが生きてきた歴史そのもの。自信を支えたり、あなたらしさを作っている大切な要素です。しかし、このままでは苦しいから変える必要がある、と思えば、変えられる部分もあります。二者択一ではなく、バランスの修正と考えるとよいかもしれません。
嫌で捨ててしまいたいけど、どうしても変えられない価値観もあります。誰かに甘えたい、とか、人にどうしても威張りたいんだ、という部分が実はその人にとってとても大事である場合、それを手放そうとすることは、自らの幹を否定するようなもの。無理矢理変わろうとせず、うまくつき合う、というイメージで取りかかってみましょう。
私の好きな言葉に、「ニーバーの祈り」というものがあります。
「神よ 私たちに、変えられるものを変える勇気と、変えられないものを受け容れる冷静さと、その2つを見極める知恵を与えたまえ」(神学者 ニーバー)
あなたにとって変えられるもの、変えられないものは何かを考えてみましょう。