最大のリスクは子供を「勉強ギライ」にする親だった

一方、中学受験のデメリットとは何か。

まず、経済的負担の大きさだ。塾代が3年間で200万円~300万円。無事、合格すると私立の中高一貫校の場合は6年間の授業料600万円~700万円かかる。合計1000万円超も珍しくない。家計に負担がかかることを覚悟しなければならない。

子供を進学塾に入れる多くの親はこの塾費用に関しては特に問題はない。実は、中学受験の最大のデメリットは、経済的サポートをする「親の言動」が原因となって起きているのだ。

それは「受験勉強で勉強ギライにしてしまうこと」と矢野さんは言う。

中学受験人気の高まりから、競争は激化し、受験生は大変な勉強量をこなしている。進学塾通いは、先述の通り、通常新4年生(3年生の2月)から始まり(早い人は低学年から)、5、6年生で勉強時間はぐっと増える。長期休暇には、1日10時間以上勉強することもザラだ。問題は、それを見守る親の態度だ。

「子供の成績が伸びない時、宿題をイヤがってやらない時、お子さんにどんな言葉をかけるのか。できないところばかり見て親が怒っていたら、間違いなく勉強ギライになります」(矢野さん)

金を出す代わりに、口も出す。「勉強しろ、しろ」と小うるさい親は少なくなく、それが子供のやる気をそぐのだ。筆者もこの話を聞いて耳が痛かった。

筆者の娘はまれに公文の宿題をノリノリでやる日があるが、普段はお絵描きや弟との遊びに夢中になって、何度もやんわり勉強を促してもなかなかやらない。結局、筆者が「公文の宿題をやりなさい」という直球の言葉で10回くらい注意して、最終的には、雷を落としてしまう。娘は、怒られてしぶしぶ勉強する毎日だ。

塾内テストが30点でも怒らずに、30点取れたことを評価

では、子供を勉強ギライにしてしまうリスクの高い親はどうしたらいいのか。矢野さんはこうアドバイスする。

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「大事なのは、勉強をやった日に褒めてあげることですよね。また、塾内テストで100点満点中30点だと聞いても怒るのではなく、30点とれたことを評価してあげる。そして、できなかった部分を一緒に見て、わかる楽しさを体験させる。親は、点数や偏差値、塾での順位にとらわれず、その子が昨日より今日、今日より明日、子供がほんの少しずつでも伸びているところを見つけて、評価し、学ぶ楽しさを肯定的に伝え続けられるか。ポジティブな姿勢を親が持てるかどうかが問われます」(矢野さん)

一度勉強ギライになると、その後の人生は厳しいものとなる。仮に私立中学に合格してもその後は伸び悩むし、公立中学へ進学して、高校・大学受験で挽回しようとしても、なかなか難しい。なぜなら、彼らはもう自主的には勉強しないからだ。多くの一流大学合格者が語っているように、合格の条件は「自学自習できること」だ。その根っこの部分を折るか、育てていけるか。それは、すべて親の言動にかかっているといって過言ではない。