「中国が地元の資源を搾取し続けている」

BLAは分離独立勢力で、基本的にはアルカイダやイスラム国などの国際的ジハード集団とは一線を置いている。しかし、現地住民に十分な恩恵が与えられない(失業や貧困はパキスタンでも最悪レベル)なか、バルチスタン州の豊富な資源(鉄鉱石や石炭、天然ガスなど)を採り続けるパキスタン政府や中国への敵対心を強め、近年暴力をエスカレートさせている。

近年、特に大きな事件となったのは2018年11月だ。最大の都市カラチで同月下旬、BLAの戦闘員たちが中国領事館を襲撃し、警察官2人を含む4人が死亡した。事件後、BLAは、「中国が地元の資源を搾取し続けており、それを停止しない限り攻撃を続ける」と発表した。

その次月、この襲撃事件を主導したBLAの幹部アスラム・バロチ容疑者(Aslam Baloch)は、バルチスタン州と接するアフガニスタン・カンダハル州で発生した自爆テロで死亡。だがBLAの広報官は「同容疑者は死んだものの、今後も一帯一路戦略を進める中国への攻撃を続ける」と声明を出した。

BLAは2017年5月にも、中国が43年の租借権を得たバルチスタン州南部のグワダル港で作業員10人を殺害。2018年8月には中国人労働者が乗るバスを襲撃し、数人を負傷させる事件を起こしている。

パキスタン政府は2017年6月、中国権益への攻撃が相次ぐことから、中国人の保護を目的に治安部隊1万5000人を投入することを決定。パキスタンも中国も、「中国パキスタン経済回廊(CPEC)」の重要性から、妥協する姿勢は見せていない。今後も中国には同様のリスクが付きまとう。

中東への関与増大も今後は反発の種に

また、中国は中東への関与も深めている。イラクのアブドルマハディ首相(当時)は昨年9月、北京で習近平氏と会談。イラクの一帯一路への参加が表明された。両国間の貿易額は2018年に300億ドルを超えるなど、近年両国間の経済関係は深まっている。イラク再建に向け、経済や社会インフラ、文化や治安など多方面で、中国からの支援が加速するとされている。

だが、イラクでは昨年10月以降、イラク政府への不満を持つ若者らによる激しい抗議デモが続いており、治安当局と衝突するなどして500人近くが死亡している。若者たちは、イラクに駐留する米軍や、イラク政府を支援するイランへの反発も強め、「No to America and no to Iran, Sunnis and Shias are brothers」、すなわち、「アメリカもイランも出て行け、スンニ派もシーア派も同じイラク人だ」と訴えたりしている。