一斉休校に反対する人たちの中には、この地方分権論を持ち出して反対する人が多い。安倍さんも、間違った地方分権の話が頭に浮かんだのか、「休校するか否かについて地方自治体の判断を妨げない」と言ってしまった。
これもリスクコミュニケーションの失敗だったと思う。
国全体での感染症対策は、やはり国が責任をもって、国全体の視点でやるべきだ。一斉休校は、「子供たちを守る」というよりも「社会防衛策」であり、国全体で一斉にやらなければならないことをしっかり説明すべきであった。それができていなかったので、安倍さんの休校方針に従わない自治体が出てきてしまったのである。
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データがない中での大胆決断、データがそろえば修正も
また、一斉休校の判断について明確な根拠がないと安倍さんは批判を受けている。この点も、政府のリスクコミュニケーションがうまくいっていない。
前号では大規模イベントの自粛について論じたが、それと同じく、明確なデータがそろってからの一斉休校では遅いのである。
政府がやろうとしていることは、国全体での爆発的感染拡大を抑えることである。感染を完全に阻止することではない。2月25日の政府の対策基本方針では「流行のスピードを抑える」という点が明示されており、まさに爆発的感染拡大を抑えることが目標となっていた。ところが、いつのまにやら感染の完全阻止を目指しているような雰囲気になっている。
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感染の完全阻止なら、データや根拠をもとに、感染者を追跡しながら対策を講じていくことになるであろう。しかし爆発的感染拡大のピークを抑えるというのであれば、それは流行期に入る手前の段階で、ピークを抑える策を大胆に講じなければならない。
つまり「感染状況がデータ的に明らかになった時点でやってもすでに遅い」というところが、このピークを抑える策の一番難しい点である。感染状況がデータ的に明らかになった頃にはもう爆発的感染拡大を抑えることができないのである。
よって、権限・責任者が流行期に向かう「気配」を感じ取って、大胆にピークを抑える策を打ち込まなければならない。