受刑者が受刑者に直に「あなたにとって償いとは何ですか?」と問う
このTCに参加できるのは、初犯であることなどいくつかの条件を満たした40人のみ。カメラは20代の受刑者4人に密着。インタビューも挿入されるが、とりわけ印象的なのは、4人がほかの受刑者たちがほか受刑者との対話の中などで口々に言う「(物心ついて初めて)打ち解けられる仲間ができた」という言葉だ。このTCを受けることで、幼年期に親の愛情をあまり受けずに育ってきた孤独な彼らの心の中に「自分は一人じゃない」という意識が芽生えてくるのだ。
TCには専門知識を持つスタッフが関わっているが、スタッフが受刑者に講義を行うスタイルではなく、受刑者同士が輪になって語り合う。これが映画作品のタイトルの由来にもなっている。
受刑者のひとりが司会役をする中、ほかの受刑者が自分の過去を告白したり、ときには、他の受刑者から「今、刑務所で教育(TCのこと)を受けてて変われているんですか?」「あなたにとって償いとは何ですか?」などとを問い詰められたりする場面もある。1週間に計12時間のプログラムを体験していくうちに、最初は過去の自分や事件について多くを語らなかった受刑者が、重い口を開き、心を解放していく。
誰かが強制しなくても、くるべきときがきたら自分から話し始めるのだ。思い出しながら泣く受刑者。その話を聞いて、やっぱり泣いてしまう別の受刑者。少しずつ何かが変わっていく。
「窃盗がどうしていけないのかわからず、気がついたら盗んでいた」
例えば、母親は育児放棄で食事は学校給食のみで、3人目の父親からは家庭内暴力を受けた時期もあり、小学校でもいじめを受けていた真人(24・強盗致傷:オヤジ狩りや窃盗で刑期8年)は言った。
「強盗が悪いのはわかる。でも、窃盗がどうしていけないのか自分にはわからず、気がついたら盗んでいる状態だった。勝手に手が動いてしまうから、出所したらまたやってしまうだろう」
この心情の吐露に対して、他の受刑者たちは「そうなんやぁ」と否定も肯定もしない。が、彼らの“聞く力”によって、真人は初めて真剣に自分の盗癖について考え始める。
別の受刑者は、TCを受けるまでは「自分は人に加害を与えたとは思っていない。俺は被害者だなって勝手に思っていた」「被害者は(自分:受刑者の行為によって)亡くなってるんですけど、お前も悪いだろっていう部分もあった」と受刑者との対話やインタビューの中で語った。