欧州の経済にも暗い影を落とす

米中貿易戦争の余波は、日本、米国、欧州の経済にも暗い影を落とす。世界の工場といわれる中国は、サプライチェーンの末端だ。その中国が関税上げでダメになれば、自ずとこのサプライチェーンを変えなくてはならない。

大竹愼一『米中壊滅 日中スワップ協定なんてとんでもない』(徳間書店)

「随分前から、米国企業は、サプライチェーンを、自国やベトナム、インドなど、アジアに変えてきた。だから、そんなに米国企業は焦っていない。しかし、日本企業は何の準備もせず、日本電産においては、全世界の受注が約30%減となり、今になって焦っている」(大竹氏)

一方、欧州、特にドイツは、中国の一帯一路政策にべったりで、最も酷いことになる。米中貿易戦争の影響で、①欧州→②日本→③米国の順で、ダメージは大きい。

「しかし、その米国経済は国内要因でも減速し、19年から20年にかけ、景気は悪化。米国が減速すれば、日本、欧州、途上国にも、大きなマイナスのインパクトとなる。私が注目しているのは、マネーサプライ(通貨供給量)だ。米国が金利を引き下げ低金利となり、マネーサプライが上昇すると、日本のマネーサプライとの差が拡大する。その場合、相当な円高、日本株安となるだろう。これは、マネタリストの理論だ。20年は1ドル=90円の円高となり、日経平均株価は1万円から1万3000円くらいまで低下する可能性がある。日本は消費がアップしなければ、景気は良くならない。消費税増税は愚の骨頂」と、大竹氏は語る。

大竹愼一
30年以上活躍する辣腕ファンドマネジャー。Ohtake,Urizar&Co.社長。著書に『ブレないトランプが世界恐慌を巻き起こす』ほか多数。
(撮影=尾関裕士)
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