総理顔負けの子どもの発想力

そうして、通貨投入を続けたら、なんとデフレを脱却したのです。みんなお金がたくさんあるから、「じゃあ使おうかな」となって、総理の狙いがバッチリはまりました。

沼田晶弘『世界標準のアクティブ・ラーニングでわかった ぬまっち流 自分で伸びる小学生の育て方』(KADOKAWA)

面白かったのが、この通貨投入を行ったあと、本物の総理の安倍晋三首相がアベノミクスで通貨投入を始めたのです。見事にデフレ脱却を果たした「アクション国」の総理は、そのニュースを見て、「だから言ったじゃん、通貨投入しかないって」という一言。それには思いっきり笑いました。

デフレを脱却し、今度は金持ちのところにどんどんお金が集まるようになると、土地の買い合いが始まりました。彼らにとっての一等地はボクの席の前。ボクがつぶやくことを聞いたり、席に座ったまま話したりできるので、その土地が何千アクションと高騰したのです。

また、金持ちが生まれると、当然、貧乏な子も生まれてしまいます。中には、借金をしないと生活できない子も生まれてしまいました。そんな中でも、さらにさまざまな仕事は生まれていきます。ギターがうまい子をプロデュースしてコンサートを開き、帽子にお金を入れてもらう子や、コンクールに出るようなチェロがすごく上手な子は特別コンサートを開いてくれました。

やっぱりお金を教えることは必要だった

そんな「アクション国」でしたが、ある日、突然、消滅しました。それは、借金がかさんでしまい、つらくなってしまう子が出てきたからです。

ボクが、このとき、すごく悔しかったのが、その借金で困った子たちは自分からまったく動かず、誰にも助けを求めようとしなかったことでした。その子たちが動きさえすれば、絶対に誰かが手を貸してくれただろうし、もしボクに「こんな会社をやろうと思うんだけど」と言ってきたら、「銀行からお金貸すよ、援助もする」と全面バックアップもできたのです。

相談するのが難しかったとしても、ボクが銀行の秘書を募集したときに手を挙げてくれさえすれば、その子たちを雇い、きっと救うこともできたでしょう。ただ、ボクは、こんな子たちが出てしまうからこそ、お金について学ぶことが大切だと思っています。

子どもは、自分でお金を稼がなくても不自由のない暮らしができます。だから、お金の大切さはなかなかわかりません。だからこそ、それを教えてあげなければいけないと思うのです。「アクションワールド」は、子どもにとってはゲーム感覚に近かったのかもしれませんが、その中で、お金を稼ぐことや、お金を使うことの基本は学べたと思っています。

関連記事
「教育熱心でも子供が伸びない」のはなぜなのか
「ぽっちゃり」を「給食エース」と呼ぶ教師の作戦
「教員にタメ口」でも麻布が生徒を怒らないワケ
冗談でも「うちのバカ息子」と言ってはいけない
頭のいい子が開成・麻布を蹴っていく学校名