匿名空間に見つけた貴重な居場所
取り上げたケースは、取材した中でのほんの一例だが、極端なものではない。日常生活の中で生きづらさを抱える人たちにとって、ネット上の匿名空間は生きづらさを解放できる数少ない居場所になっている。
孤独や不安を抱えた人ほど、出会い系やSNSにつながりを求める。「死にたい」というつぶやきは、リアルな空間ではなかなか言い出せない声、緩やかなつながりを求める声なのかもしれない。
一方で、ネット空間には、いじめや差別、排除と言った現実世界の負の側面が入り込み、SNSに起因する事件の発生も決して少なくない。
匿名コミュニケーションの危険性を過度に主張する人たちがいるが、表面的であって、ネット空間がもたらす癒し効果を見ていない。監視や規制を強めることは、リアルな空間で生きづらさを抱えた人たちの貴重な居場所の側面を狭め、かえって生きづらさを慢性化させるだけになるのではないだろうか。