会社の同期の住宅購入で妻の競争心に火がついた

そしてこう祥太さんに話しかけたという。

「どうせ、近いうちに買うなら、消費税がアップする前に買っておいたほうが絶対おトクよ」
「物件選びさえ失敗しなければ、不動産は安全な金融商品。ローン終了後は資産になるんだよ」
「家賃と同じくらいの住宅ローン返済でいいなら、キレイで広い家に住みたいわ」
「若いうちに家を買っておいたほうが、早く住宅ローンが終わるしね」
「今は金利が低いし、住宅ローンの税制優遇もいろいろあるよ」

急転直下の「マイホーム購入」の動きにあっけに取られる祥太さんを尻目に、亜子さんは、いかに今家を買うべきかをプレゼンしだしたのだ。

妻が説明する「購入すべき理由」は、すべてもっともらしいものだったが、これまで夫婦間で、住宅購入の話などしたことがない祥太さんにとって、まさに寝耳に水。著者に相談にきた祥太さんはこう話す。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/AntonioGuillem)

「最初は、何で急に(家が)欲しいなんて言い出したのかわけがわかりませんでした。でも、すぐに、妻はAさん夫婦に負けたくないと思ったのかもと気付いたんです。『同期なんだから、Aに買えて、自分たちに買えないはずはない』って。特にAの奥さんは妻の後輩ですからね」

「Aの奥さんは、どちらかと言えば、おっとりしたお嬢さまタイプ。僕の妻は、正反対で、頭も良いし、しっかり者なんですが、気が強くて、おまけに負けず嫌いなんですよ。だから悔しかったんじゃないでしょうか。ちょうど、Aとは、結婚した時期や子どもの年齢もだいたい同じでしたから。これまであまり他人に嫉妬するようなことなんてなかったのに、同期だけに、妻の競争心に火が付いたんでしょう」

返済は月12万円、35年後の66歳まで払い続ける

結局、亜子さんの勢いに押される形で、祥太さんも住宅を購入することに同意。半年以上かけて、物件探しや資金計画などを立て、消費税が上がる前に駆け込みでマイホームを買うことができた。

購入したのは、物件価格4000万円の築5年の中古マンション。駅から比較的近くて、ほぼ希望通りの物件だったこと。子育てのしやすい環境であることなどが決め手だった。

300万円をかけて内装などをリフォームし、さらに、手数料などの諸費用約120万円、家具・家電製品の買い替えや引っ越し費用など約150万円かかった。

手持ちの預貯金500万円は、これらのリフォーム費用などに使ってしまったため、4000万円以上の住宅ローンを最長35年で組むことに。これから毎月約12万円の住宅ローンを66歳まで返済していかなければならない。

気が遠くなりそうな話だが、いまさら元には戻れない。何とかなるだろう。前を向いて頑張るしかないと田村さん夫婦は思っていた。