ソフトバンクが巨大化する今、NTT再統合を

ZHDとLINEの経営統合には「独占禁止法の壁が立ちはだかるのでは」という指摘もあるが、それはさておき、孫会長の情熱と野望で投資会社となったソフトバンクが、さまざまな事業体を飲み込んで巨大化している昨今、純国産キャリアであるNTTにも再統合の機会が与えられるべきだと私は考える。

「増税なき財政再建」をスローガンに掲げる第二次臨時行政調査会(土光敏夫会長)で政府公社の民営化が議論され、その答申を受けて1984年に電気通信事業法と日本電信電話会社法(NTT法)が成立して日本電信電話公社の民営化が決定、1985年4月にNTTは誕生した。

さらに民営化してもNTTは巨大すぎて民業を圧迫するということで、手足を縛るために分割されることになった。当時、独占禁止法違反でAT&Tを地域分割したアメリカにならって、NTTもNTT東日本とNTT西日本、NTTコミュニケーションズ、NTTドコモ、NTTデータに分割されたのだ。

携帯電話の時代になってからはドコモが長らく稼ぎ頭だった。しかし、5Gなど次世代技術の開発競争が激化する中、ここにきてドコモの稼ぐ力も弱まってきている。またデジタル交換機によって「長距離」という概念がなくなり、携帯電話から簡単に海外やネットにアクセスできる現代において、地域分割したり、国内通信と国際通信に分ける意味もなくなっている。

気がつけば22に解体されたアメリカの地域通信事業者(ベビーベル)は、通信技術の進歩とともにいつのまにか再統合されてAT&Tとベライゾンの2社にほぼ集約され、寡占状態に戻っている。それでもGAFAのようなデジタル・プラットフォーマーの勝者にはなっていない。

現在の通信実態を鑑みれば、NTTもバラバラに事業を行うよりもストレートに再統合したほうが、スケールメリットが生きる時代なのだ。ところが恐竜が暴れ回るといけないということで中生代につくったNTT法があるために、再統合ができない。

通信事業の頭打ち感が否めない中、NTTが将来的に目指すべきは銀行だと私は思っている。NTTが統合すれば、固定電話と携帯電話の顧客の名寄せは簡単にできる。その顧客データこそが最強の資産であって、それを活用して銀行業に取り組めばアリババ傘下のアント・フィナンシャルのようになれる可能性がある。

NTT分割民営化は中曽根康弘政権の産物。先般お亡くなりになった中曽根氏が現役だったら「NTT法を改正して、もう自由にしてやれ」と言って後押ししてくれるのではないだろうか。

(構成=小川 剛 写真=毎日新聞社/アフロ)
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