ピロリ菌を除菌すれば胃がんはほぼなくなる

そもそも胃がんは、ほとんど予防することができる病気です。胃がんの原因の多くが、ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)による慢性胃炎です。ピロリ菌を保菌していると、胃の粘膜が常態的に炎症を起こし、そこに胃がんが発生するのです。ピロリ菌以外の要素が原因となる胃がんは全胃がんのなかの数パーセントあるかないか、といわれています。

そのため、ピロリ菌を除菌することで、胃がんはほとんどなくなるものと考えられます。

ピロリ菌は幼少期に感染し、大人になっても自然に除菌されることはありません。胃がん予防のためにはできるだけ早くピロリ菌を保菌しているかを調べ、除菌しておくことが肝心だといえるでしょう。

ピロリ菌の感染経路はいまだ解明されておりませんが、保菌しているかどうかの検査や除菌は簡単に行うことができます。

まず、ピロリ菌検査については、かつては胃カメラで胃の粘膜や組織の一部を採取してそこに菌がいるか確認するのが一般的でしたが、近年ではより簡単な検査も普及しています。被験者がピロリ菌に反応する検査薬を服用し、呼気を調べるだけでピロリ菌の有無を調べることができる検査もあります。

除菌自体はより簡単で、1週間程度抗生物質を服用するだけです。90%近い方はそれで除菌が完了し、まだ菌が残っていた場合には、再度薬を服用します。

胃がんの死亡率は下がり続けている

ピロリ菌検査や除菌には、数千円程度の費用がかかりますが、胃がんに罹患するリスクを大きく下げることのできる明らかに有用な手立てです。胃がんを予防したいという方は、ピロリ菌検査を受けるのがおすすめです。

最近では中学生に向けてピロリ菌検査を取り入れている自治体も増えています。今後、ピロリ菌除菌はいっそう広まっていくことでしょう。いずれはピロリ菌検査が健診項目に盛り込まれるかもしれません。

ピロリ菌の除菌による予防が普及すれば、胃がんはいずれほとんどなくなると考えられるでしょう。

かつて、日本人のがんの部位別死亡率は男女ともに胃が1位でしたが、胃がんの死亡率は減少し続け、男性は1990年代、女性は2000年代に入ってそれぞれ肺がん、大腸がんに取って代わられました。発症率も、40代の胃がん罹患率は昭和58年の40%にまで減少しています。30年後には胃がんはほとんどなくなっているのではないでしょうか。

(構成=梁観児)
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