京都名所に“自分の名刻む”世界のバカ観光客

インスタ映えするスポットとして有名な「竹やぶのトンネル」は、小刹のすぐ近く。数年前までは日が暮れれば、地元の男性も寄り付かない「危険な道」だった。今では夜10時を過ぎても、真っ暗闇の竹やぶを歩く観光客の姿を見かけることがあり、ぎょっとさせられることしばしばだ。

しかし、これは危ない。

当該地は観光客が食べ残したゴミ箱の中の残飯をあさって夜間、イノシシが出る。イノシシに遭遇するのはまだいいほうで、むしろ「不審な人間」のほうが怖かったりする。痴漢・暴漢などによる「事件」がいつ起きないとも限らないので、私は気をんでいる。

当地では、器物損壊などの犯罪行為も生じている。美しい竹の肌が、人為的に傷つけられているのだ。鍵やナイフなどの鋭利なもので名前やマークなどが刻まれている。マジックで書かれたものもある。この小径には、竹穂垣と呼ばれる高さ2mほどの垣根があるが、その垣根を壊して手を伸ばし、竹に落書きしているのだ。

一部の竹は緑色のガムテープを貼って隠しているが、まるで絆創膏ばんそうこうのようで痛々しく、美観上、みっともない。

撮影=鵜飼秀徳
傷つけられた竹にガムテープが貼られている

私が数分歩いて確認しただけで英語や中国語、ハングルなど外国人の手によるものと思われる傷が多数、確認できた。日本語での落書きも少なくなかった。「嵯峨野の竹林を守ろう」との立て看板の真横に生えている竹には、あたかもその文言に挑戦するかのごとく、竹の上部から下部まで傷が付けられ、ボロボロの状態だ。傷ついた竹を見るたび、悲しい思いになる。

撮影=鵜飼秀徳
マジックで書かれた竹も

傷が付けられた竹はそこから腐食して、枯れてしまう可能性もある。もはや、マナーの問題ではなく犯罪行為なので、警察にはきちんと捜査してもらいたいものだ。

舞妓さんに付きまとい、庭の苔を踏みまくる外国人

ところ変わって花街で有名な祇園の花見小路では、舞妓さんが外国人に追い回され、写真を撮られるなどのマナー違反で困惑しているという。舞妓さんの襟にタバコを入れられるなどの、信じられない被害も報告されている。

小刹のような寺院の場合、もっとも困るのが庭のコケを踏まれることである。杉苔が踏まれると枯死してしまう恐れがある。自由に庭を見ていただきたいとは思うものの正直、立会いなしでの外国人の参拝は、不安がよぎる。できれば、観光ガイドと一緒に参拝していただきたいとも思う。

私はこの1年で複数の外国人旅行者に対し、「苔を踏んではいけない」と注意している。すると、すぐに謝っていただけるケースがほとんどだった。「おもてなし」のお礼として、お布施を賽銭箱に入れていただくケースもあった。双方、コミュニケーションをはかりながら、観光マナーのリテラシーを高めていくことが大事だと思った。