その効果はすぐに表れた。P&Gは他の石けんメーカーの業績をはるかに上回っただけでなく、その利益は1933年の250万ドルから、翌1934年には400万ドルに跳ね上がったのだ。ラジオによってP&Gのメッセージが多くの家庭に届けられ、幹部は新たなメディアを熟知し、ラジオ放送のまったく新しいジャンル、「ソープ・オペラ〔日中に放送される連続もののメロドラマ〕」を切り開いた。
大量生産技術から消費者心理学へのLEAP(跳躍)
P&Gが消費者心理を理解していなかったら、これらすべてのことは成し得なかっただろう。消費者心理は同社の基盤となる2番目の知識分野となっていった。この分野へのシフトはゆっくりとしたものだったが、ここに重点が置かれていたことは、同社CEOの専門分野と経歴に最もよく表れていた。
アドバタイジング・エイジ誌は1956年にこう報じた。「P&Gが新しい社長を探すとき、同社は前社長が在籍していた部門で人材を探す。つまり、宣伝部門だ」。生産部門でも、営業部門でもないということだ。
P&Gが他の消費財メーカーとはかなり異なる形でイノベーションができたのも、この消費者心理学から得られた知識のおかげだった。同社は何十年にもわたって、新しいメディア、つまりラジオからカラーテレビ、ソーシャルメディアまでを使って広告を行う先駆者となった。