では、実際、どの程度のマイナスが出るのか、埼玉県川口市で2003年に3500万円で新築マンションを購入したと仮定し、賃貸に出した場合の収支を試算した。川口駅から徒歩12分、65平方メートル・3LDKのファミリータイプの物件だ。

家賃は周辺の相場から考えると、9万5000円程度が妥当だろう。表面利回りは約3.3%。そして、毎月の支出では、ローン返済に11万5000円(金利3%、返済期間35年で試算)。これに管理費と修繕積立金の1万8000円、さらに自宅を賃貸に出す場合、不動産会社に管理を依頼するのが一般的なので、その手数料として家賃の5%にあたる費用を上乗せすると合計13万7750円の出費が見込まれる。つまり、差し引き4万2750円の赤字が毎月出る計算だ。

賃貸相場が緩やかな下降傾向で、物件が古くなることを考えると今後、家賃を下げざるをえない可能性も高い。

それでも入居者がいればまだましだ。空き室になれば、支出はすべて自己負担になる。不動産会社に賃貸の運営を委託する「サブリース方式」にして家賃保証を受ける手もあるが、手元にくるお金は家賃の8割程度に減る。それならば、最初から家賃を下げたほうがいいだろう。

さらに、マイホームを賃貸に出せば、アパートローンなどへの切り替えが必要となり、金利優遇が受けられなくなり、金利が上がることになる。ただこれはあくまで原則なので、金融機関に一度相談してみるとよい。

毎月の出費以外にも、固定資産税などの支払いがあり、住戸内の修繕費や、入居者が入れ替わる際のクリーニング代も見越しておく必要がある。修繕などは一種の商習慣として敷金・礼金で賄えた時代もあったが、昨今は礼金ゼロという物件が増え、敷金も国交省のガイドラインによれば借り主負担とする部分以外は返却しなくてはならない。更新料ですら徴収するのが難しくなりつつある。

入居者が家賃を滞納したまま住み続けるケースも後を絶たないが、現行の法律では滞納を理由にすぐ退去させるのは難しい。契約を2~3年で区切る「定期借家」にしておくのが防衛策の1つだが、契約更新が難しくなるのではと勘違いされて借り手がつかないことを恐れ、実行していない大家さんが多い。

(構成=上島寿子)