2つ目の方法は、下り坂を楽しむことだ。専門を鍛える山は、登りよりも下りのほうが傾斜はなだらかである。いま50歳だとして、70歳までのあと20年、プロとして働き続けることを考えてみよう。下り坂では第一線の活躍は無理としても別の仕事が生まれてくる。自分のメンバーや部下の中から、次の時代のトッププロを生み出す教育活動に注力するのだ。今まで自分が先輩や師匠から受けてきた恩を今度は後進に与え、プロの世代継承をすることで会社に貢献する。
3つ目の方法はまったく別の山に登ってみることだ。例えば、税理士の資格を取って独立開業したかったのに、それを諦めて営業マンとして生きてきた人の場合である。人間誰しも複数の能力を持っているものの、そのうち使われる能力は限られる。使わずにいるけれど、退化せずに残っている能力を「ネグレクテッド・タレント」という。この場合、最後まで捨てきれない夢をかなえるため、税理士に挑戦してみる。そこまで強固に思い続けたからには、何らかのネグレクテッド・タレントがあるはずで、そう苦労せずとも夢は実現するはずだ。
しかも、一度山の頂上に行った人は山登りのノウハウを身につけているから、楽に頂上に立てる。第一外国語より第二外国語のほうが習得が早いのと同じことである。もちろん、それまで培った営業マンのキャリアが役立つことはいうまでもない。50歳で別の山登りに挑戦したとしても、充分、営業センスをそなえた第一線の税理士として活躍できよう。
【「会社ぶら下がり」で年収半減。あの日に帰りたい:検証ルポ50代】
■54歳、再就職ままならず危機感ゼロの自業自得
勤める会社が外資系やライバル企業に買収される。会社が自分の所属する事業部門を売りに出す。部門丸ごと海外に移転する。グローバル・エコノミーの進展で、社員とその家族の生活そのものが大きく揺さぶられることも、いまや日常茶飯事になっている。