捨てられない人は経済的に差をつけられる

新しいものを使うことを放棄したミドルエイジも同様である。もしもあなたがクタクタの古いシャツを着て、「ガラケー」を手に仕事をしていたら、若手社員から冷ややかな目を向けられるはずだ。部下は心の底で「この人の下で働いて、大丈夫か」と不安に思う。そして何も言わずに、会社を去っていく。

人間社会では同じような人が集まるものだが、感度が鈍い会社には、感度の鈍い人ばかりが集まるようになる。すると、精神的には安定するかもしれないが、他社の社員とはまったく話が合わなくなり、世界は狭くなっていく。

そうして、捨てる人と捨てない人の差は開いていき、それがやがて経済的格差につながっていくのだ。

それがイヤなら、捨てるしかない。古いものを捨てて、新しいものを使うことは、自分の感度をつねにフレッシュにするための第一歩なのである。

「捨てる」ことが重要なのは、ものだけでなく、考え方や知識も同様だ。最近、「アンラーニング」という言葉を耳にするようになった。これは、「学習棄却」という意味で、いまの時代に合った考え方や知識を身につけるには、これまで学んだ考え方や知識に上書きをするのではなく、いったんそれらを捨て去って、新たに学び直すことが必要だという考え方だという。

私は、中高年の学び直しに関しては否定的だが、この考え方には同意する。古くさ
い考え方や知識は、新たな学びのジャマになるだけだ。どんどん捨てて構わない。

ときめかない常識やスタイルは捨てろ

近年は「捨てる」に関するブームがいくつも起きている。「ミニマリスト」という言葉がよく言われるようになったし、「捨てる技術」や「断捨離」の本もヒットした。さらに、その流れで登場したのが、「こんまり」だ。

成毛眞『一秒で捨てろ!』(PHPビジネス新書)

こんまりが支持されたのは、「ときめかないものは捨てて良い」と、捨てられない人の背中を押してくれたことだ。

捨てるというと、「エコと逆行している」「もったいない」となり、ポイポイ捨てるのは、後ろめたい行為ではあった。それを「ときめかないならOK」と言ってくれたことで、罪悪感が薄まったわけだ。ものがあふれているのは、日本だけでなく、世界的に言えることだからだろう。

また、メルカリのようなフリマアプリやネットオークションの登場も、「捨てる」ブームに拍車をかけている。たとえ大した収入にならなくても、「誰かに使ってもらえば、成仏する」という思い込みにより、ものを手放すことに後ろめたさがなくなるからだ。

このようなトレンドのなかでは、捨てる意識をもつのは容易なはずである。にもかかわらず、捨てる意識をいまだにもてない人は多いようだ。また、ものは捨てられても、ビジネスの領域までは捨てる意識をもてないという人も多いようである。

しかし、自分を取り巻くあらゆる場面で「捨てる」を意識することが何より必要だ。

その意識の差が、自分の運命を決めると言っても過言ではないことは、本稿を読んで理解いただけたと思う。

ビジネスパーソンは、捨てるトレンドに乗り、自分がときめかない常識やスタイルはどんどんすてるべきだ。そう、「ビジネス版こんまり」を目指せ、と声を大にして言いたい。

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