アイデンティティの構築に「記憶の管理」が必要
【岡本】「情報圏」という概念を提示したルチアーノ・フロリディは、「記憶と相互作用」についてこのように言っています。
(『第四の革命』新曜社、2017年、99~100頁)
データを「忘れる」装置の開発
【深谷】記憶装置とともに、データの断捨離や忘却のための装置も開発されていくべきなのですね。
【岡本】ではそのとき、どういうかたちで忘却するように設計するか、が問題になります。人間はその点では無意識的に忘却という作業をやっているわけですから気楽ですが、機械は何をもって「忘れていい」「捨てていい」と判断するか、これは相当に難しい問題です。わたしたちのように、自分に都合のいいように覚えていたり忘れてしまったりという塩梅ができるようになるかどうか。
【深谷】人間を真似ていけば、忘却の仕方も真似られるんじゃないかと思うんですけど。
【岡本】そうだと思います。だから、インターネットにも記憶の墓場が必要になってくるのですね。そのとき、わたしたちは、忘れるということがこんなすごい能力なんだということを知ることになるのだと思います。