天ぷら自動揚げ機で低価格を実現
てんやの売りはなんといっても、本来なら高級料理である天丼を低価格で提供していることだ。エビやイカなどの魚介類と野菜の天ぷら5種がご飯に載った看板商品「天丼並盛」(みそ汁付き/540円、以下すべて税込み)は、創業当時は480円だった。今よりも天丼に対して高級なイメージが強かった時代に、ワンコインで事足りる手ごろさで人気を博した。
この低価格を実現したのが、独自開発した天ぷら自動揚げ機械「オートフライヤー」だ。
天ぷら粉をつけた食材をベルトコンベヤーに載せると、温度調整まで自動でしてくれて、きれいに揚がる。従来は、天ぷらを上手に揚げるには熟練の技術が必要だったが、オートフライヤーを使うことで、未経験者でも短期間で簡単に揚げられるようになり、人件費の抑制につながった。
18年1月の値上げが大きく響いた
安さを武器に支持を得てきたてんやだが、17年ごろから既存店の業績が低迷するようになった。そして18年に入ってから不振が顕著となった格好だ。大きく影響したのが、18年1月に実施した値上げだろう。
売り上げの4割弱を占めるとされる天丼並盛を500円から540円に引き上げるなど、6種類のメニューを10~50円値上げした。8%も価格が上昇し、ワンコインで食べられなくなったとあっては、客足が遠のくことは避けられない。
1月以降、既存店の客数減が連続するようになる。既存店売上高も、値上げによって上昇した客単価で補うことはできず、マイナスの月が目立つようになった。「天丼なのに手軽」が売りだったのに、庶民にとっては急に遠い存在になってしまったのだ。特に、日々の食費を切り詰めて家計を助けるビジネスパーソンにとって、この値上げへの抵抗感は相当大きかったのではないだろうか。
さらに今、てんやを取り巻く状況は厳しさを増している。競合他社の天ぷら・天丼専門店が台頭しているためだ。