職場は人間関係で成り立っている
私たちは、夜勤で深夜0時から朝6時まで働きましたが、勤務後、ポーランド人はシャワーを浴び、2時間休憩して、また次の職場に出向いたのです。こういう働き方をする人もいるのかと、そのときは驚きました。
また、イタリア人には別の面で勉強させてもらいました。彼はチームリーダーで、ダイナマイトの使用に関する注意をする役なのですが、ある日、マネジャーにまで注意をしてしまったのです。当然マネジャーは気を悪くして帰ってしまいました。注意するとしても、言い方次第では「しっかり者」とみなされたかもしれません。
こういった人間関係を間近に感じる社会経験は、たいへん勉強になりました。
2年目は、フランス国有鉄道の現場。ちょうどTGVが走り始めた頃で、若いエンジニアたちとの意見交換も刺激的でした。
3年目は、南仏のソフィア・アンティポリスの研究室で、エンジニアとして材料物理の研究に精を出しました。
現場を経験することで、物理や経済などの学術以外に、社会のシステムや人間関係、マネジメントを体感することができました。
勉強だけできても駄目。職場は人間関係で成り立っていることを思い知らされます。
パリにかかわらず、東京、ニューヨーク、どこへ行っても社員、お客様、取引先、組合、様々な人々と触れあうのは変わりません。それぞれの立場があることを理解していないと、ビジネスの成功もありえません。
フランスのビジネスエリートは、ただ物理や経済、数学などの学術を勉強するだけではいけないことを理解しています。将来グローバルに経済を動かす人物になるには、学術以外に「ヒューマニズム」を理解しなければいけないのです。