クローズドなのに簡単につながれる

そしてスタンプ機能です。今では当たり前になっているスタンプ機能も、当時は「インフォメーション(情報)でなく、エモーション(感情)を伝える画期的な発明」とされました。

さらには、ミクシィやツイッター、フェイスブックら競合トップ3とは違い、オープンではなく「クローズド」な環境であったこと。これは差別化要因ではありますが、結果的に、メインストリーム市場が望む「周りが皆使っている」「使わないでいるほうが恥ずかしい」といった「取り残され不安」を誘う環境作りにも貢献しました。

また、クローズドと言いながら「ふるふる」や「QRコード」によって瞬時につながることができる機能も、面倒が嫌われるメインストリーム市場に訴えるものだと言えるでしょう。

流行は20代女性から始まったのではないか

近年の動きに目を転じれば、2016年からLINEが掲げている「スマートポータル構想」は、類似化戦略に位置づけられるものだと考えられます。これは、コミュニケーションアプリとしてのLINEを入り口とし、音楽や動画、マンガなどのコンテンツ、またECや決済など生活サービス全般を提供するという戦略です。

現在のLINEユーザーは、LINEアプリを起点とした一つのプラットフォーム内で、LINEユーザー向けに標準化したさまざまなサービスを享受しています。メッセンジャーアプリ単体ではなく、プラットフォームとして広くマーケットを獲得していく戦略。これがユーザーのさらなる拡大に貢献することは、言うまでもありません。

時系列を整理してみると、LINEにおけるイノベイターやアーリーアダプターは、アプリがローンチされた12年6月直後のユーザーだと考えられます。総務省情報通信政策研究所「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」によると、12年時点では10代の38.8%が、20代の48.9%がLINEを利用しています。他方、30代の利用率は29.1%、40代は11.5%にとどまりました。

加えていうなら、LINEの想定ターゲットは女性だったことが知られています。情報ではなく感情をやり取りするスタンプ機能も、共感を重視する女性のユーザーから火がついたのです。ここから、スマホを購入するだけの金銭的余裕があり、なおかつ新しいものに感度が高い20代女性からLINEの流行が始まったと推察できます。