次のステップは新人の作業に対するレビューだ。作業の成果とプロセスに着目し、良かった点と改善点を示す。フィードバックの原則は「褒める・叱る・褒める」である。次に解決すべき課題を示す的確なレビューこそ新人を伸ばす1番の糧となる。レビューについては、帰りの電車の中など、移動時間や空き時間を有効活用し、日々のコミュニケーションの中で行えばよい。
「作業OJT」では、新人が一つひとつの作業を習得するまで「指示→モニタリング→レビュー」を繰り返す。そのうえで、最終的に全体の仕事を覚えさせていく。そうすると、新人の得意・不得意の見極め、できているか否かの判断がしやすくなる。
連合艦隊司令長官・山本五十六は「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、ほめてやらねば、人は動かず」という名言を残している。
仕事には、難易度が高く言葉で説明しても伝わりにくい「やってみせる型」の仕事と、手順通り教えれば新人でもできる「言って聞かせる型」の仕事がある。
前者は、新人自身の自発的な学びや先輩のやり方を盗む力に頼りがちだが、それは教えることを放棄しているにすぎない。とくに新人が仕事の壁にぶつかったときには、やってみせながら上司として経験に基づくやり方を教えるべきだ。新人が壁に突き当たったときこそ、教える絶好の機会といえる。
言って聞かせる型の仕事は言うまでもなく、「背中を見て覚えろ」では効率が悪い。面倒に思わず一度きっちりと教えれば後で自分が楽になる。
この「作業OJT」を実践することで、弊社では新入社員が仕事を習得するスピードが格段に速くなった。例えば、パワーポイントを利用したプレゼンテーション資料を1カ月という短期間で作成できるようになっている。
私が以前の会社で新入社員であった10年前を思い返すと、クライアントに提示できるレベルの資料を作れるようになるまで、少なくとも半年はかかったと記憶している。
その理由は、非常に厳しい環境の中で「上司の技を盗むことでうまくやれ」という独立独歩の仕事習得を求められたからであろう。
このような「俺の背中を見て覚えろ」という指導スタイルは、団塊の世代をはじめとする年配者や職人気質の技術者などに多く見られる。しかし、終身雇用制度が崩壊し、短期間での業務の継承が求められている現状では、この指導スタイルは非効率このうえない。
一見、面倒に見えるが、新人に任せられるような仕事は言葉で説明し、計画に基づいて教え込んだほうが効率がいい。故に「作業OJT」は、定年間近の団塊の世代などから若手社員への仕事の継承にも有効に作用するだろう。