「消費税廃止」に焦点をしぼった訴えが奏功
知名度もなく、マスコミにも無視される中での2議席獲得は大健闘ではある。ただし、街頭の熱狂は、もっと議席を獲得するのではないか、と予感させるものだった。比例区に「特定枠」として2人を擁立したため、3議席以上獲得しなければ当選できない立場に身を置いていた山本氏も、議席は得られなかった。そういう意味では「うれしさも中ぐらい」の結果だった。
それでも山本氏は「10人擁立して10人通せなかったのは私の力不足。私自身も議席を得られなかったのは残念なことだ。しかし、一切後悔はない」と前を向いた。次につながる結果だったと受け止めているのだろう。
なぜ「れいわ」の声は国民に届いたのか。これは山本氏の存在感と演説に尽きる。元俳優だけにトーク力の高さは国会質問などで実証済みだったが、今回の選挙戦では「消費税廃止」に焦点をしぼった訴えが分かりやすかった。他の野党の訴えが「10%に上げるのは反対」などとまわりくどかったのとは対照的だった。
次の選挙では「100人ぐらい候補者を立てないといけない」
中でも最も歯切れよかったのが「政権を獲る」と宣言したことだ。今回の参院選で国会に足掛かりをつくり、来る衆院選などを通じて国会で多数派を形成すると断じている。その実現性はさておき、とにかく聞く者に響いた。安倍1強といわれる現状に不満を持っていた人たちの受け皿となったのだ。
山本氏は22日未明の会見で「私たちは無視できない存在になっている。(次期衆院選には)100人ぐらい候補者を立てないといけないだろう。メンバーもそろえて皆さんの力を借りながら、政権を取りにいく気迫でいきたい。(自身も候補者として)出るしかないのではないか」と自ら衆院選に出馬する考えも明らかにした。
「れいわ」がイメージするのは、細川護熙氏が代表を務めた日本新党ではないか。日本新党は1992年の参院選で国政初挑戦し4議席を獲得。そして翌年の衆院選では35人の当選者を出し、その流れで同年8月、細川氏は首相の座に上り詰める。まさにホップ、ステップ、ジャンプ。ゼロからスタートして1年で政権政党に上り詰めた日本新党の再来を、「れいわ」は目指すことになる。
今の政治状況をみると早ければ年内に衆院選があるという予測もある。遅くとも2021年秋の衆院任期満了までには必ずある。山本氏も日本新党のことは頭の中にあるはずだ。