まずは「全体図」を把握すること
残念ながら、「十分なサンプル数を試さずに」彼女と同じようになってしまうことは、私たちにもよくある。
統計学的な言い方をすれば、私たちが抽出するサンプル数は少なすぎて全体を代表していないにもかかわらず、それだけの情報をもとに性急に決断を下してしまう。
現実を反映しない間違ったイメージを自分の中につくりあげ、広い世界のほんの二、三種類のサンプルを試しただけで、人生のパートナーや、理想の仕事や、最適な居住地を見つけられると信じている。
もちろん、それでうまくいくときもある。もしあなたが少ないサンプルの中からでも最適な選択ができているのなら、非常に喜ばしいことだ。
だがその結果は、運よく得られたものにすぎない。少ないサンプル数で、いつも最適なものを見つけ出せるとは思わないほうがいい。
世界は私たちが思っているよりもずっと広く、ずっと多彩で、いろいろなものを含んでいる。若いうちは、できるだけたくさんのサンプルを試すようにしよう。
大人になってからの最初の数年間で重要なのは、お金を稼ぐことでもキャリアを積むことでもない。「人生の全体図を把握すること」だ。
常にオープンな姿勢を崩さず、偶然が与えてくれたものはすべて試すようにしよう。本もたくさん読んだほうがいい。小説を読めばすばらしい人生を疑似体験できる。ものごととの向き合い方を変えるのは、年をとってからでいい。
そうして年をとったら、かかわることをぐっと絞り込もう。その頃にはあなたはもう、自分の好みをしっかりと把握できているはずだから。
作家、実業家
1966年、スイス生まれ。スイス、ザンクトガレン大学卒業。スイス航空会社の子会社数社にて最高財務責任者、最高経営責任者を歴任後、ビジネス書籍の要約を提供する世界最大規模のオンライン・ライブラリー「getAbstract」を設立。35歳から執筆活動をはじめ、ドイツ、スイスなどのさまざまな新聞、雑誌にてコラムを連載。著書『なぜ、間違えたのか?――誰もがハマる52の思考の落とし穴』(サンマーク出版)はドイツ『シュピーゲル』ベストセラーランキングで1位にランクインし、大きな話題となった。本書はドイツで25万部突破のベストセラーで、世界29カ国で翻訳されている。著者累計売上部数は250万部を超える。小説家、パイロットでもある。スイス、ベルン在住。