資金のたまる常識外れの回転期間
キーエンスは、取引先との決済条件である「回収サイト」と「支払サイト」にも特徴がある。
「回収サイト」とは、顧客に商品を販売してから代金が入金されるまでの期間をいう。これは、売上債権回転期間(売上債権÷一日当たり売上高)を計算すれば、おおむね算出できる。
一方、「支払サイト」は、外注先から委託品を納入してからその代金を支払うまでの期間をいう。回収サイトと同様に、仕入債務回転期間(仕入債務÷一日当たり売上原価)を計算すれば、おおむね算出できる。
実際に計算してみると、売上債権回転期間(≒回収サイト)は105.3日であるのに対し、仕入債務回転期間(≒支払サイト)は22.2日しかない。つまり、外注先へは1カ月弱で代金を支払わなければならないのに、顧客からの回収は3カ月以上もかかっているのだ(図表6)。
これでは、収支のタイミングのバランスに欠けるので、経営上は望ましい姿ではない、というのが一般的な見方だ。「回収は早く、支払いは遅く」がキャッシュフロー経営の鉄則である。アップルやアマゾンは、取引上の立場の強さから、外部業者への支払サイトを極端に長くしている。そうすることで、自社に資金をたまりやすくしている。