繰り返しになるが、あくまで怒りの感情をコントロールすることが大切で、抑え込むのではない。したがって、冷静になったうえで、伝えるべき怒りは適切に表現しよう。

たとえば「1つ、お伝えしていいですか」と断りを入れたうえで、口頭ならば低い声で、メールならば、あまり長くない文章で、ポイントを絞って相手に感情を届けよう。先ほどの「唐突に急な仕事を振られたこと」についてだとすれば、下記のような言い方がある。

「今回はなんとか周りの人にも無理をお願いして今日中に対応しますが、次からは進捗を前もって共有していただけたらと思います」

ストレスは悪いことばかりではない

HRインスティテュート『全員転職時代のポータブルスキル大全』(KADOKAWA)

最後に、ストレスとの適切な付き合い方を紹介する。コンスタントに活躍できる人は間違いなくストレスマネジメントがうまい。

前提として、ストレスは、悪いことばかりではない。短期的にはコルチゾール(ストレスホルモン)のレベルを引き上げ、アドレナリンを増加させることで、意識を高めてくれる。これにより、差し迫る納期に間に合うよう仕事効率を上げる、といった馬力が発揮できるのだ。

問題になるのは、ストレスが長期にわたる場合だ。コルチゾールを持続的に増加させると、脳に有害な影響が及び、記憶力や集中力等を低下させる。

ただ、多くの人は、完全に押し潰されるまで、自分の集中力が弱まっていることに気がつかない。だからこそ、今のストレスのレベルを自覚することが必要になる。

ストレスのレベルを自覚するには、その日の心身の状態を10点満点で手帳に記入してみることだ。なぜその点数をつけたのか、理由も書く。加えて、「ストレスに感じていること、不安なこと」を書き出してみて、それらを「自分で変えられるもの/変えられないもの」に整理してみる。

チームのストレスを見える化する効果

変えられないものは大きなストレスになるが、本当に変えられないのか、別の見方ができないかを考えられれば、ストレスレベルを下げる糸口も見つかり得る。

これを発展させて、図表1のようにチームでその日の心身の状態をボードにプロットし、共有する方法もある。毎朝、メンバーは自分の名前や似顔絵が書かれたマグネットを、その日の状態に合わせて貼り付ける。

『全員転職時代のポータブルスキル大全』より

ある会社のクレーム処理部門では、このボードでその日のストレスを見える化したところ、お互いの状態を気遣って助け合いが生まれ、チーム活性化に繋がったという。

まず「自覚する」ことがストレスコントロールの第一歩となる。上手にコントロールしてストレスを力に変えよう。とくに部下を持つ人には身につけてほしいスキルである。

三坂健(みさか・けん)
HRインスティテュート シニアコンサルタント
慶應義塾大学経済学部卒業。安田火災海上保険株式会社(現・損害保険ジャパン日本興亜株式会社)にて法人営業等に携わる。退社後、HRインスティテュートに参画。現在は常務取締役兼シニアコンサルタント。経営コンサルティングを中心に、教育コンテンツの開発、人事制度設計、新規事業開発、人材育成トレーニングなどを手掛ける。
(写真=iStock.com)
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