改元に向けて月を追うごとに景況感の改善要因に
「景気ウォッチャー調査」では、先行き判断で「改元」にふれたウォッチャーが昨年10月の2人に対し、11月6人、12月17人、今年1月30人、2月は60人、3月は97人と月を追うごとに増えている。改元についてコメントで触れた人から、改元関連先行き判断DIを作ると10月は景況判断の分岐点と同じ50.0と中立だったが、11月70.8、12月55.9、1月63.3、2月63.8、3月は59.3で50を上回っている(図表3)。景況感の押上げ要因になっていることがわかる。
「ゴールデンウィークや改元などにより、一時的に景気が底上げされるとみている。その後も、夏休みや、消費税の引上げ前の駆け込み需要があるため、9月までは景気が上向くと見込んでいる」〔東北、旅行代理店(店長)〕、「今回は、天皇陛下の御退位及び皇太子殿下の御即位、改元と、崩御による時代の変化ではないので自粛ムードはなく、新時代の始まりという心理的解放感が良い刺激となり、消費税の引上げまでは、上向き傾向になると思われる」〔東海、その他飲食[仕出し](経営者)〕、「改元の影響でゴム印の注文が増加する」〔中国、一般小売店[印章](経営者)〕という「やや良くなる」という見方が多い。
その中、「改元のお祝いムードがどのように盛り上がるのか想像し難いことや、10連休中やその後にシステムや金融、経済に混乱が起きないか等、懸念が多く、マインドは上向かない。消費税の引上げ前の駆け込み需要も7月くらいまでは目立つ動きにならないだろう。」〔四国、商店街(事務局長)〕という慎重な見方も見られる。
現状判断で「改元」にふれたウォッチャーが10~12月は0人だったが、1月1人、2月は3人、3月は9人とこちらも月を追うごとに増えている。改元関連現状判断DIを作ると3月は55.6で50を上回っている。「法人においては、働き方改革、改元、消費税再増税を契機としたシステム再構築の需要が堅調である」〔東京都、通信会社(管理担当)〕というコメントがある。
なお「10連休」に関しては2月調査で現状判断の関連DIは68.8(同8人)、先行き判断の関連DIは58.0(回答者72人)、3月調査では現状判断DIは52.3(同11人)、先行き判断DIは55.5(同119人)である。こちらも多くのコメントがあり、なおかつ景気判断の分岐点50を上回っている(図表4)。
景気ウォッチャー調査によれば、景気ウォッチャーたちは天皇の生前退位、新天皇即位、改元という一大イベントが日本の景気にとってプラス効果が見込まれると判断していると言えよう。
三井住友DSアセットマネジメント理事・チーフエコノミスト
三井銀行(現・三井住友銀行)で都市銀行初のマーケットエコノミストを務める。さくら証券チーフエコノミストなどを経て現職。パイオニアである日本の月次経済指標予測に定評がある。身近な社会データを予告信号とする、経済・金融のナウキャスト的予測手法を開発。その他、「景気ウォッチャー調査」などの開発・改善に取り組んできており、最近では政府の経済統計改革にも参画。「景気循環学会」常務理事。著書に『ジンクスで読む日本経済』(東洋経済新報社)など。