クラウドファンディングで重要な「発案者の信用」
先ほどお金とは、外部化された信用と述べた。お金は、信用を数字の形にして流通可能な形態へと変えたものだ。具体的な事例で述べると、クラウドファンディングがわかりやすい。
お金を投じる目的は人それぞれだが、お金を集められるのは、プロジェクト自体の価値(構想力×実現力)と、プロジェクト発案者の信用による。特にプロジェクト発案者の信用は重要で、より多くの人から好かれ、共感され、功徳を積んでいる人ほどお金を集めやすい。クラウドファンディングは信用をお金に変えることができるわかりやすいシステムである。
もちろん銀行からの融資を受けるときや投資家からの出資を受けるときなど、いずれもその人の信用が問われる。やがて個人や企業や地域がトークンという形で通貨を発行する時代が来るだろうが、それもまた信用のなせるわざである。
つまり信用の土台がなければお金を生むことはできないということだ。逆に現代では信用のATMからお金を引き出すことは容易になりつつある。1万円の土台には我が国の信用(経済力×徴税力)がある。1万円は単に1万円として存在しているのではなく、それを下支えする信用が存在するということだ。それは私たち個人でも同様である。金は信なり。まずはお金を得る前に、信用を築かなければならない。
「他者への貢献」の蓄積が信用となる
私は2010年に自分の会社を諸事情で手放した。会社を売却したので現金は残ったが、それ以外は何もかも失い、大きな喪失感の中にいた。
そのときから私は徹底的に利己心をなくし、いろいろな案件が飛び込んできても基本的にお金を請求しないという生活を3年くらい続けた。事業の相談に乗ってほしいと言われれば手弁当で向かうし、若い起業家に出資してほしいと言われれば破格の条件でお金を出した。出資先は宇宙開発事業、有機食品、海外ビジネスインターンシップ、アニメ制作、劇団、ロボット事業などさまざまだ。
結果的に私は無償で奉仕することで現金というマネーをいったん「価値」に交換して、その「価値」を積み重ねて「信用残高」を増やしていった。
求めないと、人は信用される。結果として軽井沢で家を安く借りることも旅先で有用なネットワークを紹介してもらうことも日常品を譲ってもらうこともできた。
私はこれを「信用ロンダリング」と言っているが、信用主義経済への過渡期においては重要なことだと思う。信用をお金に変えることは簡単にできても、お金を信用に変えるのは手間がかかるからである。
ではその信用はどのように構築されるかと言えば、価値の集積である。すなわち人にどれだけ貢献してきたか、その積み重ねが信用という名のタンクに蓄積される。これは目に見えるときも見えないときもある。営業マンであれば日々の営業成績が年次の人事評価となり、それが給与やボーナスという形で反映されるのでよくわかるだろう。
この法則はフリーランスや学生にも当てはまる。すなわち他者への貢献(価値創造)の蓄積が信用となるのだ。その信用をもってお金を引き出すことが可能となる。