町家が並ぶ一角を買収し「中国風の名前」で再開発

その後、京都ではインバウンド消費への期待がますます高まりました。

不動産のデータベースを取り扱うCBREの調査によれば、京都で17年から20年までの間に新しく供給されるホテルの客室数は、16年末の既存ストックの57%に相当するとされています。

これはつまり、16年に比べて1.5倍以上の客室数がこの数年で必要とされるようになった、ということです。

そのような背景の中で、京都の町中では今、驚くべき事態が進んでいます。筆頭が、外国資本による「町」の買い占めです。

NHKによれば、中国の投資会社「蛮子投資集団」は18年に半年の期間で120軒もの不動産を買収したそうです。中には町家が路地に並ぶ一画を丸ごと買って、そこを「蛮子花間小路」という中国風の名前で再開発するという計画まで発表されています(『かんさい熱視線』、18年6月29日)。

外国人が京都を買い求めているのはなぜでしょうか。

大前提として、続く観光ラッシュと、2020年東京オリンピック・パラリンピックを前に、観光地の土地の需要と価値が高まっているということがあります。

その一方で、円安の状況が続いているため、外国人から見れば割安感がある、ということも考えられます。また日本はローンの金利も低く、不動産は定期借地ではなく私有が基本なので、一度買ったら永久に所有できるのも大きいでしょう。

日本は「安くてお得な」不動産投資先になっている

それらの要素は、地理的な距離が近い場所にいる中国人にとっては、とりわけ有利に働きます。

経済発展とともに上海や北京など大都市では不動産の値上がりが激しく、もはやその価格は東京を凌ぐようになりました。要するに、日本は外国人にとって、「安くてお得な」不動産投資ができる場所になっているのです。

国土交通省が発表した18年の基準地価では、商業地の地価上昇率トップが、北海道の倶知安町でした。町名だけでは、なぜ倶知安が1位なのか、にわかに分かりませんが、ここはニセコのスキーリゾート地として、外国人観光客に大人気の土地です。

同調査では、トップ5の2位から4位までは、京都市東山区と下京区が占めました。前年に比べた変動率、つまり上昇率は倶知安で45%以上、京都ではいずれも25%を上回っています。

京都の不動産を狙うのは、もちろん外国資本だけではありません。京都の市街地では、風情ある町並みの中に、安手のホテルを建設するパターンも増加しています。

これまで、空き家になった町家跡にコインパーキングが乱造されていました。今ではそれが立体化してホテルが建設されるようになったのです。