見た目に凝るより、中身の設計を見誤らないことがはるかに重要だ。上司に資料作成を頼まれた場合、いきなり作りだしてはいけない。三木氏は20代の頃から、かいつまんだポイントだけを並べた資料の「設計図」を、まず上司に見せていたという。「上司への確認にあたって、数字やデータ類が本物である必要はありません。この手のデータを探す予定だと伝えられれば十分です」。ここまでを先に確認できれば、完成させた後に全部やり直しという手戻りを防げる。

稟議書を通すコツはずばり「売り上げアップかコスト削減につながること」だと濱田氏は断言する。「その数字さえ押さえてあれば、余計なことを書く必要はない。ほんの2~3行の稟議書でも通るものです」。そのうえで清水氏は、日頃の「信頼残高」がモノを言うと指摘する。「この人の稟議書はたぶん大丈夫、と社内で思われていれば、優先順位を上げて早く回してもらえるもの。信頼を勝ち得ておくことで、スピードアップにつながることも多い」と指摘する。

社外向けの資料についてはどうか。濱田氏のアドバイスは、「顧客の前で、手書きのラフを書いてしまうこと」だという。提案書は、自分でゼロから作るのではなく、あくまで顧客と合意した内容を書面化するものだと肝に銘じよう。手書きラフは、ごくシンプルでいいので、図解で見せると効果的だ。「形」で見せることで、顧客のイメージとズレがないかどうか、いっそうクリアにできるからだ。「的確に描けたラフスケッチは、顧客から『写メ撮らせてもらっていいですか?』と言われることも多い。そうなったら、その商談はほぼ確実に決まります」。

【4】面倒な部下の指導
報連相スキルを上げる「正しい質問」とは

悪い報告をされたら、まず何を言うべきか

「上司にとって報連相は命綱」と濱田氏は言う。今はほとんどの仕事がパソコンで完結するうえ、社外からの電話も個人のスマホにかかってくることが増えた。そのせいで、部下の様子を見ているだけでは何をやっているのかわからないことが多い。

だが、「報連相」をしっかりやってくれと言われて喜ぶ部下はいない。単純に億劫なことに加え、悪い報告をすれば小言を言われるのがわかっているからだ。部下が報連相をしたがらないのは、上司にも責任があると濱田氏は言う。「多くの上司は、部下が報告するのは当たり前と思っていて、礼の1つも言いません」。むしろ、進捗の遅れや小さなミスを咎めてガミガミ言い始める上司さえ少なくない。それでは報連相が滞るのが当たり前。上司からはますます状況が見えづらくなる。「仮に注意したいことがあっても、まず報告を上げたこと自体は評価すべき。そのスタンスさえ崩さなければ、やがて部下から言ってくるようになる」。

もちろん、回りくどい報連相をする部下を放置しておいてはいけない。三木氏が常に部下に言い続けているのは、結論を先に述べることと、事実と意見を分けて伝えることだ。しかしそれでも、要領を得ない部下には、「正しい質問」をすることを心がけているという。「報連相が下手な人は、様々な要素が整理できていない。どういうゴールに対して現状はどうで、どんな対応策が取れるのか? などと、状況を分解してから質問してあげるといい」。