会議運営のコンサルも多数手がける清水氏は、いつも習慣で開いている会議をすべて棚卸しするよう勧める。開催頻度と参加者、会議の所要時間をすべて洗い出すのだ。特に所要時間については、説明、議論、結論を出すプロセスにそれぞれ何分ずつ割いているか細分化することで、どこに時間ドロボーが潜んでいるかが一目瞭然となる。「ほとんどの会議は説明時間が長すぎ。1時間の会議のうち40分が説明で終わる会議もザラ。問題のない『正常報告』は紙を配って口頭説明はなくすなど、ここを簡素化するだけで、会議全体の所要時間が半減したケースもある」。

三木氏の会社では、会議の時間を最短15分単位で設定している。「1時間はいくらなんでも長い。せいぜい30分で十分」。最初から長めに設定すると、ついダラダラしてしまいがち。短時間で成果を出すには、アジェンダ(議題)をしっかり絞り込んでおく必要がある。例えば「新サービスについて」といったテーマでは曖昧すぎると三木氏は言う。「もっとテーマを絞って、『新サービス仕様決定会議』などとすべき。そうすれば何を決めるべき会議か明確になる」。会議名を変えるだけで、短時間で密度の濃い議論ができる。

アポを使って「出るべき会議」を取捨選択

三木氏は参加者の選び方についても常に戦略的に考えている。会議で決まったことが後から覆されたら大いなる時間の無駄だ。そうならないためにも、後で何か言ってくる可能性がある人は、会議に呼んでしまったほうがよいという。「近頃は、いざ実行に移す段になって、『コンプライアンス上の問題がある』と言われるケースも少なくない。初めからコンプライアンス部を呼んでおけば間違いない」。

一方、自分が一参加者の場合、会議の時間を無駄にしない工夫としてはどんなことができるだろうか。清水氏はまず、何より本当に出るべき会議を取捨選択しようと提案する。だが、参加メンバーに入っている以上、「忙しいから参加したくない」とは言いづらいはず。そんな場合、「外回りのアポを入れてしまうのがコツ」と清水氏。「お客さま都合で動かせないと言えば角が立ちませんから」。あるいは、出席するにしても「14時半までしかいられません」などと、あらかじめ言っておくのも有効だという。「すると他のメンバーも、大事なことだけでも14時半までに決めよう、という心理が働き、結果的に短時間で会議を終えられることも多い」という。

最初から最後まで出席すると決めた会議でも、議論下手なメンバーがいると、話が脱線したり、無駄なやり取りの応酬が続いたりして、時間の浪費につながることがある。消耗戦になりそうなとき、清水氏によれば「この件は長くなりそうなので、後で2人で話しませんか」というかわし方が有効だと言う。いたずらに相手の尊厳を傷つけなければ、それ以上食いつかれないで済む。

最後に清水氏は、会議のうまい組織の例として、ある会社の会議ルールを紹介してくれた。それは、①必要な情報は事前に共有し、配付資料の読み上げは禁止する、②会議冒頭でゴールを決め、最後はTo Doを確認する、といった内容で、明文化してすべての会議室に張り出しているという。「こうした工夫で、会議が終盤に近づくと、誰もが『そろそろTo Doを出さなくちゃ』という気になります」。また、進行役(ファシリテーター)を輪番制にして、全員が会議の進行を意識するよう促しているという。