「アンケート至上主義」だった週刊少年ジャンプ

もともと週刊少年ジャンプは「アンケート至上主義」と揶揄されるほど、読者アンケートの結果を重視してきた。作家も編集者もアンケートで1位を取ることを最大の目標としており、アンケート上位にランクインすることはすなわち、誰もが知る人気漫画であることを示していた。

「1位を取ればコミックスも売れて、アニメにもなる。だから何がなんでも1位を獲るんだと、みんな必死でやっていました」(細野氏)

最盛期には1週間で数万件の読者アンケートが編集部に寄せられていたため、ヒット作を見極めるための定量的な指標として十分機能していた。だが今は雑誌とコミックスに加えて、電子書籍やアプリ、SNSでもマンガを読める時代。マンガを読むスタイルも多様化し、これまでと同じ指標でヒットを判断するのが難しくなってきたのだ。

「ヒットとはそもそも何を指すのか。何をもって読者にウケていると言えるのか。紙だけの時代とは違って、その判断指標が複雑でわかりづらい状況です。ジャンププラスでは、『まずは読者に読んでもらうことが重要』と考えて、閲覧数を追いかけました」(細野氏)

サービス開始から1、2年の間は閲覧数を指標にしていたが、いざその数字を分析してみると、必ずしも指標にはならないことがわかってきた。

2年目を過ぎた頃からは『ファイアパンチ』や『終末のハーレム』といったオリジナル作品がネットを中心に話題になり、新連載によってアクティブユーザーが20~30万人増えるということもあった。編集部では「やはり(アンケートの票のように)話題になる作品ありき」という声も上がった。

だが高い閲覧数がそのまま比例して単行本が売れたり、社会的なインパクトを与えたりする、ということには至らなかった。ジャンププラスは、累計発行部数3億2000万部超でギネス世界記録に認定された『ONE PIECE(ワンピース)』のようなメガヒット作を生むことを目標にしているが、まだ生まれていない。