動画の再生数は伸びたが……
フランスからの“直輸入レシピ”の最新作が、2018年10月に発売した『並べて包んで焼くだけレシピ』(上田淳子)。これはフランスの伝統的な調理法「紙包み焼き」のレシピ集だが、「型紙」が付いているのが特徴だ。
1つのレシピが見開きページで紹介されており、右ページには材料やレシピ、完成品の写真などが掲載され、左ページには材料が実物大に描かれたイラストがある。このイラストが型紙となっており、その上にクッキングシートを敷いてイラストに沿って材料や調味料を並べ、包めば準備OK。あとはオーブンレンジやフライパンなどで加熱すればできあがりだ。
発売前に、このレシピの手順動画を編集部の公式ツイッターに投稿したところ、40万回以上再生されるほど大きな反響があった。
だが、その後重版はかかったものの、現在のところ想定よりも売れ行きは伸びていないという。
「ネットで興味を持ってくれる層と、実際に購入する層が異なりました。もともと実用書はオンライン書店より実店舗のほうがよく売れるのですが、書店では手に取って中を見ないと、この本の良さがわからないのが、難しいところです」
初版完売でも「赤字」の料理本業界
想定外の売上推移は、料理本全体の売り上げ減も遠因となっている。
「自分の肌感覚ですが、料理本は2017年下半期から一段と売れなくなっているように思います」
料理本は、小田さんいわく「小さなビジネス」だ。
「だいたいの本は初版5000部前後ですが、初版が完売しても赤字というケースは少なくありません。料理研究家やカメラマン、スタイリストなど1冊にかかわるスタッフが多く、そこに材料代、食器のリースやスタジオ代が加わる。さらにはだいたいの場合、本そのものの判型が大きく、全ページがカラー。他ジャンルよりも制作費がかかるんです」
そのため、「長期間売れる本をつくり、版を重ねて利益を出す」というやり方が確立されてきた。そのなかで、2000年代中盤に料理ブロガーブームが起こり、07年頃からはブロガーたちのレシピ集が発売されるようになる。出版点数が増えても、書店の料理本コーナーのスペースには限りがある。売れ行きが悪ければさっさと返本されてしまうが、わかっていながらも各社は“棚”を獲るために新刊を出し続け、結果さらに点数が増える。この悪循環が現在に至るまで続いているという。